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2025.1.17
採択事業者インタビュー⑤ 矢田義典(Communis代表)「Plant It Green!」
左から道家洋さん、矢田義典さん
クリエイティブ・リンク・ナゴヤでは2024年度も助成事業を実施しています。そこで「社会連携活動助成」で採択された事業(助成A×5件、助成B×1件)を6回にわたってご紹介します。社会連携活動助成A・Bの詳細はこちらをご覧ください。
第5回はCommunisの矢田義典さんと道家洋さんにお話を伺いました。
■ 事業名 Plant It Green!
都市の緑を「コモンズ」の視点から考え直すため、ジル・クレマン「動いている庭」をとりあげ、セミナー、映画試写、シンポジウムを行う。
詳細については下記URLからご確認ください:
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映画『動いている庭』上映会/「Plant It Green!」シンポジウム、セミナー、ワークショップ:参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます・ログイン不要)
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公式WEBサイト:Plant It Green! 公式サイト
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公式Instagramアカウント:@communis_pig
■ 採択区分 社会連携活動助成A
■ 採択金額 ¥1,000,000
■ 実施者名 矢田義典(Communis代表)
■ 活動領域 美術、デザイン、建築
■ 連携先の分野 まちづくり、国際交流、教育
■ 期日・会場
[セミナー] 名古屋国際センターもしくはオンライン
2025年1月17日(金)『風景を読み、生きるを考えるー京都/岐阜の調査から』(惠谷浩子)、
2025年1月25日(土)『グリーンインフラ:歴史・自然・文化の結晶である社会の冨〜社会的共通資本としての緑地〜』(石川幹子)、
2025年2月24日(月/祝)『庭に学ぶ、生活の美学 ジル・クレマンの動いている庭』(エマニュエル・マレス)
[ワークショップ] 『落ち葉の発酵熱を使った「足湯」をつくる』(村上慧)
2025年2月8日(土) 名古屋市西区那古野一丁目18―2
[映画上映会、シンポジウム] 名古屋国際センター
2025年3月 1日(土)13:00〜17:00
【実施者プロフィール】
Communis(コムニス)は名古屋を拠点に建築設計事務所と様々な活動媒体となる NO DETAIL IS SMALL を運営する⽮⽥義典が代表を務める団体。学⽣、市⺠ボランティアによる連合体で社会問題をテーマにした事業を⾏う。矢田のこれまでの活動には、『動いている庭』上映会及び座談会(2021)、「広告看板の家 名古屋」(2021)、 「SH_キッチンかいわい」(2023)など。
―――事業の概要についてあらためて教えてください。
矢田 事業自体は合計6つのプログラムで構成されています。セミナーが3回とワークショップが1回で、それを踏まえて3月1日に映画『動いている庭』の上映会とシンポジウムを行います。
主催するCommunisは建築や美術、環境などを社会問題の側面から考えて実践していく団体です。ゆくゆくはNPOなどに法人化する話も出ていますが、今は任意団体で活動しています。メンバーが固定されているわけではなく、プロジェクトごとに興味がある人が入ってきたり出ていったりという形です。
道家 Communisはラテン語で「コモンズ*」の語源です。多義的な意味の古い言葉を探しました。
* 編集注:コモンズとは所有権が特定の個人でなく共同体や社会全体に属する資源、またそうした考え方のこと。
矢田 広い意味で見ればコミュニティみたいな形態です。だから、アメーバみたいに広がったり、小さくなったり、こっちでは何かが動いていて、またこっちでは別で動いているみたいな感じですね。
―――都市の緑化を「コモンズ」の視点から考え直す、とは具体的にどのようなことでしょうか。
矢田 「そもそも都市の緑は誰のものか」ということです。僕らとしては緑というものは社会的共通資本として捉えたいと思っています。ひょっとすると市民の方たちは緑を行政のものだと思っているかもしれませんが、本当は皆さんの共通資本じゃないですかっていうところを一緒に考えてみたいです。
社会的共通資本については宇沢弘文さんが提唱していますが、家は私有財産で、例えば道路とか、教育とか、医療とか、そういったものが社会的共通資本なのかもしれない。でも庭は中間領域にあって、個人の所有物でありながら、社会としての共通的な要素の部分もあります。庭について考えることで、社会的共通資本を考え直すことの糸口にもなると思いました。
今回のシンポジウムではあまりポリティカルな話に持っていこうとは思っていないのですが、話の流れでは神宮外苑開発の話題が出る可能性があると思っています。都市の緑をどのように扱っていくかが問題になっていて、僕自身は開発自体にとても反対というわけではないのですが、緑をバサバサ切って、芝生を植えて、はい終わりみたいな感じはないのではないかという。SDGsや気候変動を考えると、ちゃんと木を植えた方がいいんじゃないかっていうところです。
今回は映画を見ていただいて、都市の緑についてより理解を深めてもらうためのきっかけになればいいなと思います。
―――フランスの庭師ジル・クレマンのドキュメンタリー映画『動いている庭』を取り上げますが、建築家のお立場からどのような関心を抱かれていますか。
矢田 去年、Communisを作るきっかけになったビルに囲まれた建物をフルリノベーションするプロジェクトの話なんですが、一階の奥に坪庭みたいな土地があったんです。そこで糟谷護さんという名古屋では有名なランドスケープアーキテクトの人に庭造りをお願いしました。それがきっかけで、庭についてもっとよく考えてみようとメンバーと話しました。
ジル・クレマンは映画の中で、建築家とランドスケープアーキテクトは同等の立場だと言っていて、日本とは少し事情が違うように思います。
―――名古屋の街や公園の緑は現在どのような状況でしょうか。
矢田 名古屋市のホームページで公開されている日本の21大都市の資料では、主要都市の中で緑の面積の大きさと、1人当たりの緑の面積をデータ化しています。それとWorld Cities Reportという世界主要都市のデータ集があって、それらを使って日本と世界の主要都市の緑の大きさの比較をしました。それでいくと、東京よりも名古屋の方が1人当たりの緑の面積が2.5倍ぐらい大きいのです。逆に、全体の緑の面積になると東京の方が名古屋の2.5倍ぐらい大きいことになります。
道家 東京では六本木あたりを歩いていても実は緑とベンチがありますね。
矢田 表参道にも結構緑があったりとか、明治神宮があったりとか、意外と都市部に緑地があります。名古屋はというとHisaya-odori Parkぐらい。データを鵜呑みにしてはいけないなと思ったのもこのテーマを掲げた理由のひとつです。
―――セミナーを3回開催されますが、どのような狙いがありますか?
矢田 最初の惠谷浩子さんの回では、伝統的建築とか街並みとか、そういったお話をしていただきます。
道家 惠谷先生はコモンズとしての都市景観みたいなことを研究されている方ですね。まさにそこが導入口としてぴったりなんじゃないかと思います。
矢田 その次に石川先生に社会的共通資本としての緑地というところで、僕らが掲げているコモンズというところも含めて理解を深めていただきます。3回目のセミナーはエマニュエル・マレスさんにジル・クレマンについてお話いただき、徐々に3月1日の映画の上映会とシンポジウムに向かって焦点を合わせ、機運を高めていくという流れです。
僕の友人で、フランス在住で音楽をやっている人がいて、今回の事業が決まったときにジル・クレマンについて聞いたところ、ペイサジスト(フランス語でランドスケープアーキテクトのこと)としてもすごく有名だけど、どちらかというと思想家、哲学者としての側面が評価されていると言っていました。今回登壇されるマレスさんや澤崎さんは実際にジル・クレマンと交流があり、映画にも出られているので、彼の哲学的な部分や思想的な部分の話が聞けるといいですね。
―――2月8日のワークショップについて教えてください。。
矢田 ワークショップを全体プログラムに追加してはどうかとメンバーで議論したときに、ちょうどタイミングよく北アルプス国際芸術祭で村上慧さんが展示をされていたので何名かで見に行きました。環境の循環のようなものが体験できるプログラムが「Plant It Green!」の趣旨に非常に沿っているということで、オファーをかけたらご快諾いただけました。
村上慧による足湯の展示(北アルプス国際芸術祭2024)
「Plant It Green!」のテーマは「都市の緑化をコモンズの視点から考え直す」ですが、落ち葉から発光熱で土に戻り、それがまた、木の養分か何かになって落ち葉になってと微生物を介して循環しているところが、ジル・クレマンの『動いている庭』の思想というか、理念とかに近いのではないかと思います。
ワークショップは、落ち葉を集めてきて落ち葉に水と米ぬかを入れて、数日経つとそれが発酵してきて温度が上がってきます。そこに自分の足を突っ込んでみると、まるで足湯のようにあたたかいんです。午前と午後で、それぞれ定員20名で募集します。
道家 足から伝わってくる熱が微生物の分解によるものかと思うと結構感慨深いものがあります。想像を膨らませるとかなり楽しいので、ぜひ体験してほしいです。要は単純な観察者じゃなくて、その中で共存している共生者であることが直感的に感じられる。村上さんの作品は余白の部分の広がりが多く、プロジェクトのテーマとつながるなっていうところが割と素直に僕らとしてはイメージできるっていうところがありました。
―――全体のプログラムを通じて参加者にどのようなアクション(変化)を期待されますか。
矢田 生物多様性について取り決めた「名古屋議定書 」という国際文書があります。非常に大事だと思っていて、例えば名古屋は元市長が一斉に木を桜に変えましょうと言って(矢田さんの事務所に面している)この通りとかも桜に変わりましたけど、果たしてそういうことがいいのかということも含めて、もう一度緑について少し考えるきっかけにしてもらえればいいのかな、と。ひいては、例えば自分のところの庭をどうしたらいいのかとか、そういったことを含めて皆さんが考えるきっかけになるといいのかなと思います。
家の庭先でもいいし、庭がない人は植木を出すとか、別に観葉植物とかでも全然僕はいいと思うんですけど、身近に緑がある生活みたいなのとか、そういうことを考えることが本当は環境変動に対するアクションにつながるんじゃないかなと思ったりするし、映画でも出てくるんです。
あとは、まちの開発とかも広い意味では考えてもいいんじゃないかな、と。もう少しちょっとこう調和的なあり方があってもいいのかな、というふうに思っています。
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映画『動いている庭』上映会/「Plant It Green!」シンポジウム、セミナー、ワークショップ:参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます・ログイン不要)
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公式WEBサイト:Plant It Green! 公式サイト
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公式Instagramアカウント:@communis_pig
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イベントチラシ(画像をクリックすると別ウィンドウで開きます)