アトリコナゴヤ⑧「宝のような音楽、宝のような音楽家を発見してほしい」 – 中日新聞記者 南拡大朗さん | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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インタビュー

2026.1.22

アトリコナゴヤ⑧「宝のような音楽、宝のような音楽家を発見してほしい」 – 中日新聞記者 南拡大朗さん

昨秋からスタートした「アート・リコメンド・ナゴヤ(アトリコナゴヤ)」は、名古屋をもっと楽しむための文化芸術ガイドです。その道のプロフェッショナルの方々が、当地で開催される様々な公演・展示会などから推しのイベントを、みどころとともにリコメンドします。

 

今回は、中日新聞文化芸能部記者の南拡大朗さんです。

 

 

南拡大朗 プロフィール

中日新聞文化芸能部記者。10代のころ、小林研一郎さんが音楽監督だった名フィル演奏会によく行っていました。最近始めた趣味は合唱。東別院近く「不老園」の和菓子のファンです。

 


 

各プロジェクトの詳細、チケットの購入等については、各主催者のページでご確認ください。

 

私のリコメンド 1

第216回定期演奏会 ロマンティックの神髄

会場|愛知県芸術劇場 コンサートホール(東区)

日程|2026年3月21日(土)

Webサイト|セントラル愛知交響楽団

主催|セントラル愛知交響楽団

オーケストラの指揮者は「DJのような存在でもあるな」と最近思っています。有名曲の「元ネタはこれじゃない?」と示してくれたり、関係なさそうな曲を並べて共通の魅力を気づかせてくれたり。セントラル愛知交響楽団と音楽監督・角田鋼亮さんが年間で取り組む定期演奏会シリーズ「ロマンティック・セントラル」には、特にそんな面白さを感じます。 その最終回、オーストリアの作曲家ヨーゼフ・マルクス(1882~1964年)の「ロマンティック・ピアノ協奏曲」という曲を阪田知樹さんのピアノ演奏と共に取り上げます。マルクスは音楽史上の「忘れられた存在」ともいうべき作曲家で、この曲も日本で演奏されることはまれなようです。興味をそそられるのは、彼の弟子たちがハリウッドに渡り、映画音楽の世界で大活躍した歴史です。オーケストラ音楽はクラシックの名曲だけでなく、現代でも映画やドラマ、ゲームの中でよく使われています。マルクスの曲そのものは知らなくても、「元ネタはこれか!」があるかもしれません。 他には、アトリコナゴヤ③で作曲家・安野太郎さんが「名古屋のバルトーク」と紹介していた丹羽菜月さんの新作、テレビなどで耳なじみのあるチャイコフスキーの交響曲第4番も演奏します。角田さんとプレーヤーたちの「つなぎ」のマジックに期待が高まります。

 

 


 

私のリコメンド 2

第100回市民会館名曲シリーズ 〈ベートーヴェンPLUSⅤ/第100回記念〉

会場|日本特殊陶業市民会館フォレストホール(中区)

日程|2026年3月26日(木)

Webサイト|名古屋フィルハーモニー交響楽団

主催|名古屋フィルハーモニー交響楽団

金山総合駅前にあり、2028年3月で閉館するNiterra日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)は、20世紀後半における名古屋のクラシック音楽の殿堂でした。名古屋フィルハーモニー交響楽団は現在も「市民会館名曲シリーズ」を年間で続けていて、100回目の節目を迎えます。25年度はこれまで毎回違った国内外の若手指揮者が起用され、ベートーヴェンを中心としたプログラムでそれぞれ個性的な「真剣勝負」が繰り広げられました。客席からアルプホルンを演奏するなど、ホールの大きな空間を生かした「見せる演奏」も印象に残っています。 第100回記念公演は、音楽監督として名フィルを率いる川瀬賢太郎さんが自ら指揮し、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」(通しの作品番号も100)や、有名なモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」を取り上げます。旧ソ連出身の作曲家シュニトケの「モーツァルト・ア・ラ・ハイドン」(ハイドン風モーツァルト)という珍しい曲も演奏し、川瀬さん流の「見せる演奏」が飛び出すのではと予想しています。 市民会館は閉館まであと2年。名フィルは来年度、「カウントダウン」のシリーズに入ります。

 

 


 

私のリコメンド 3

森下真樹 ベートーヴェン『運命』全楽章を踊る

会場|メニコン シアターAoi(東区)

日程|2026年2月7日(土)、2月8日(日)

Webサイト|メニコン芸術文化記念財団

主催|公益財団法人 メニコン芸術文化記念財団

音楽を目で「見る」ことができるのがダンスです。クラシック音楽に独自の振り付けをし、古典に新たな世界を見いだしたダンス作品はたくさんあります。そんな中で舞踊家の森下真樹さんは、誰もが知るベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を全曲ソロで踊り、再演を続けています。身体と音を通し、ベートーヴェンの音楽が持つ爆発的エネルギーだけでなく、独特のユーモア、さらには「生命の到達点」みたいな風景が感じられるかもしれません。 今公演を前に愛知県の日間賀島と篠島を訪れ、その経験を舞台に生かすようです。「運命」はオーケストラ曲ですが、古田友哉さんが演奏する今回のピアノ版も大変な迫力があると思います。振り付けは、楽章ごとにMIKIKOさん、森山未來さん、石川直樹さん、笠井叡さんが別々に手がけているのも興味深い点です。

 

写真: 石川直樹 デザイン: 山口良太

 


 

私のリコメンド 4

IANNIS XENAKIS PSAPPHA 加藤訓子+中村恩恵 2026

会場|愛知県芸術劇場 小ホール(東区)

日程|2026年3月25日(水)

Webサイト|愛知県芸術劇場

主催|特定非営利活動法人芸術文化ワークス、愛知県芸術劇場

打楽器演奏の舞台は、ダンスのように音楽を「見る」行為に近いと思います。私たちから見える演奏者の動きと、出てくる音がダイレクトにつながるからでしょうか。それどころか、過去に加藤訓子さんの演奏を前にした私は、舞台上にないはずの巨大な扉が眼前で開き、別世界が飛び出してくるという「幻」を見てしまいました。愛知県豊橋市出身で世界的に活躍する加藤さんのパワフルな演奏には、古来の儀式、呪術の要素があるのかもしれません。 今回、舞踊家の中村恩恵さんと共演し、ギリシャにルーツを持つ作曲家クセナキス(1922~2001年)の作品「プサッファ」などを取り上げます。プサッファとは、「幻の詩人」といわれる古代ギリシャのサッフォーのことなのだそうです。

 

 

 


 

私のリコメンド 5

開館10周年記念 オペラ「蝶々夫人」

会場|東海市芸術劇場 大ホール(東海市)

日程|2026年1月30日(金)、2月1日(日) ※2月1日(日)は予定枚数終了

Webサイト|東海市芸術劇場

主催|東海市、東海市教育委員会

昨今、特に地方都市でフル演出のオペラを見られる機会は少なくなってきていると感じています。その中にあって名古屋の隣に位置する愛知県東海市では、劇場の開館10周年を記念した「蝶々夫人」が新制作されます。日本を代表する歌手陣だけでなく、市民合唱団など地域の力を結集した祝祭的な舞台になりそうです。 オペラもまさに「見る」音楽です。演出の比重も大きく、歌詞として書かれた言葉とは別の感情が耳だけでなく、目からも伝わった時の感動は代えがたいものがあります。演奏はクリスティアン・アルミンクさん指揮の名古屋フィルハーモニー交響楽団。気鋭の演出家、佐藤美晴さんが音楽をどう視覚的に表現するか注目しています。

 

 


 

ナゴヤにコメント

名古屋では2026年4月、一度閉館していた「しらかわホール」が再開館するという喜ばしいニュースがあります。音楽専用につくられたしらかわホールの音響は素晴らしく、閉館前はセントラル愛知交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団、愛知室内オーケストラというプロのオーケストラが主な拠点にしていました。名フィルも、モーツァルトなど小規模で凝った演奏に毎年シリーズで取り組んでいました。音楽家にとって「ホールの役割は楽器と同じ」と皆さんおっしゃいます。「しらかわホールの響きをまた聴きたい」と心待ちにしているリスナーも多いと思います。 名古屋の主な音楽専用ホールは他にも、電気文化会館ザ・コンサートホール、宗次(むねつぐ)ホールがあります。国内外の著名な音楽家から、当地を拠点に実力を発揮しているアーティスト、優れたアマチュアまで、ホールに行けばさまざまな音楽との出会いがあります。ぜひご自身の耳と目で、宝のような音楽、宝のような音楽家を発見してほしいと思います。