採択事業者インタビュー④ 廣田緑+Grafis Huru Hara+Leonhart Bartolomeus「飯田街道:聞き取りアートプロジェクト」 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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2024.1.17

採択事業者インタビュー④ 廣田緑+Grafis Huru Hara+Leonhart Bartolomeus「飯田街道:聞き取りアートプロジェクト」

(左から)レオナル・バルトロメウスさん、廣田緑さん

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤの2023年度助成事業において、「社会連携」をテーマに採択された事業(助成A×3件、助成B×1件)を4回にわたってご紹介します。

各助成の詳細はこちらをご覧ください。

 

第4回は廣田緑さん、レオナル・バルトロメウスさんにお話を伺いました。

 

 

■ 事業名 飯田街道:聞き取りアートプロジェクト

アーティストとキュレーターが市民と協働し、新栄エリアに接する飯田街道の歴史を学び、版画などのアートで表現する市民参加型アートプロジェクトを行う。飯田街道の歴史を学ぶ散策ツアー、オープンスタジオ、コラボ作品制作ワークショップと展覧会、アーティスト・トークを実施する。アートを通じた地域の魅力・価値の発見、地域の子どもたちに対する教育的貢献およびアートを通じての国際交流を目指す。

 

プロジェクトへ参加を希望する方へ

散策ツアー、ワークショップへの参加は下記URLから事前申込が必要です:

  • 飯田街道散策ツアー 参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます・ログイン不要)※定員に達したら受け付けは終了します。
  • 版画ワークショップ 参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます・ログイン不要)※定員に達したら受け付けは終了します。
  • チラシはこちら(別ウィンドウが開きます)

この他、プロジェクトの実施スケジュールは本記事末尾に掲載しています。

 

■ 採択区分 A(社会連携)

■ 採択金額 ¥1,000,000

■ 実施者名 廣田緑+Grafis Huru Hara+Leonhart Bartolomeus

■ 連携分野 美術×国際交流・教育

■ 期日 2024年2月~3月

■ 会場 新栄のわ205、パルル

 

【実施者プロフィール】

インドネシアで17年間制作活動を続けてきた名古屋出身の造形作家・廣田緑と、インドネシアのジャカルタで版画を媒体としたワークショップ、研究などのアート実践を行う版画家コレクティヴ「グラフィス・フル・ハラ」、そして国際展「ドクメンタ15」の芸術監督を務めたインドネシアのコレクティヴ「ルアンルパ」のメンバー、レオナル・バルトロメウスが、聞き取り調査をベースにした協働アート・プロジェクトのために結成したユニット。

 

 

―――今回の事業の概要について教えてください。

 

廣田 飯田街道という場所を舞台にした散策ツアーを、語り部やアーティスト、一般の参加者とともに行います。その後、アーティストのオープンスタジオ、ならびにコラボ作品制作のためのワークショップを開催し、最後は作品を展示します。プロジェクトには、インドネシアの版画家コレクティヴ「グラフィス・フル・ハラ」のメンバー4名と廣田緑がアーティストとして、「ルアンルパ」メンバーのレオナル・バルトロメウスがキュレーターとして参加します。

 

まずスタートとして、2月3日(土)・4日(日)に行う飯田街道散策ツアーでは、地元の語り部の方に街の歴史についてお話しいただきながら、アーティストと一緒にみんなで街歩きをします。参加者同士で語り合ったり、それぞれが持つ思い出を共有しあったり、飯田街道や名古屋についてみんなで思いを巡らせるような機会になると思います。

 

続いて、2月9日(金)~13日(火)に、新栄のわ205の共同スタジオでオープンスタジオを開き、アーティストの公開制作を行います。興味のある方は14:00~18:00の間、好きなタイミングで遊びに来ていただき、制作の様子を見学したり、アーティストに話しかけたり、制作に参加することができます。

 

その後、17日(土)・18日(日)にはワークショップを開催します。ここでは参加者の皆さんと、アーティストと一緒にシルクスクリーンなどの複製技術を使った版画制作を行います。作品は二点作っていただき、一つはコラボ作品の一部とするためいただき、もう一つは持ち帰っていただきます。

 

プロジェクトのフィナーレとして、2月21日(水)から3月3日(日)にかけて、参加者とのコラボ作品を「パルル」で展示します。展覧会初日となる2月21日(水)は、19:00よりアーティスト・トークとオープニング・パーティを予定しています。

 

―――今回協働するメンバーとはどのように出会われたのですか。

 

廣田 ルアンルパは、2000年にジャカルタで結成されたアート・コレクティヴで、私がインドネシアで暮らしている時からよく知っていました。若手メンバーであるバルトロメウスさんも元々知り合いでしたが、彼と直接仕事でご一緒したのは2016年のあいちトリエンナーレが最初です。彼は現在山口情報芸術センター[YCAM]のキュレーターを務めています。

 

グラフィス・フル・ハラは、ルアンルパ、セルムと共に複合コレクティヴ「グッスクル」を形成する気鋭の集団で、こちらも以前から知っています。ただ、グラフィス・フル・ハラのうち今回来日するメンバーとは、オンラインで顔を合わせたのみで、これが初対面になります。

 

私とバルトロメウスさん、グラフィス・フル・ハラのメンバーが一つのチームを結成するのは今回が初めてです。私は日本語を使えるため、申請者代表としての役割を引き受けていますが、プロジェクトの実施においては全員で一つのチームとして取り組んでいます。また今回は、主催者側と参加者が一緒に一つのコミュニティを作るようなイメージで、プロジェクトを進行していきます。

 

―――どのような経緯で飯田街道でのプロジェクトが構想されたのですか。

 

(左から)バルトロメウスさん、廣田さん

 

廣田 グラフィス・フル・ハラのメンバーが教育大学の出身で、「アートと教育を繋げられるようなことをしよう」というところから話が始まりました。特に彼らは版画制作を行うコレクティヴで、ワークショップを得意としています。版画という複製技術を用いるアートなら、たくさんの方に気軽に参加してもらえると考え、プロジェクトの核として取り入れました。

 

名古屋は私自身の出身地で、またバルトロメウスさんともご一緒したあいちトリエンナーレの会場でもあるので、思い入れのある土地です。事業実施の場所に関しては、近年名古屋市内で再開発が進み、歴史のある街並みが壊されていく様子を見ていたので、人情味のあるような地域を選びたい、と考えていました。

 

構想を進める最中、新栄でシェアスペース「新栄のわ205」を営む新見永治さんにお会いする機会がありました。これまでに新見さんのところで外国の作家を呼んでイベントが行われていたことや、バルトロメウスさんが元から知り合いだったご縁などもあって、今回会場などに関してご協力いただけることになりました。また新見さんとの対話の中で、飯田街道沿いの街並みが昔と比べて大きく変化した、という話題になりました。私にとっても新栄は学生時代の多くの時間を過ごした場所でしたので、それでは飯田街道を中心に名古屋について考えるツアーをやってみよう、ということになりました。

 

―――プロジェクトに参加するうえで何か必要な準備はありますか。

 

廣田 特にありません。「この地域について思い出を語りたい」という方だけでなく、「何となく話を聞いてみたい」「アーティストの制作風景を見てみたい」という方なども、ぜひ気軽に来ていただければと思います。散策ツアー、オープンスタジオ、ワークショップのすべてに参加する必要はなく、どれか一つでも、あるいは全部に来ていただいても大丈夫です。

 

強いて挙げるなら、参加してくださる方には、スマートフォン等で構わないのでカメラを持参していただけると嬉しいです。それぞれの視点で自由に記録を残していただき、その写真をコラボ作品で生かしたいと考えています。あるいは、飯田街道をめぐる思い出が分かるような、過去の写真をお持ちいただくのも歓迎します。

 

インドネシアには、何気なく集まった人々がお茶を飲んだり自由に過ごしたりする、「ノンクロン」と呼ばれる慣習があります。今回のオープンスタジオとワークショップでも同様に、ちょっとお茶を飲みに来るような感覚で来ていただき、アーティストとの対話や共同での作品制作を楽しんでもらえればと思います。

 

―――主催者の皆さんは多様な活動歴をお持ちですが、名古屋の地で一つのプロジェクトを手掛けることについて、どのように感じていらっしゃいますか。

 

バルトロメウス 私たちはこの名古屋で、新しいプロジェクトのためのコレクティヴを結成するような意識でいます。人々のコミュニケーションのあり方についてアートを介して考えるグラフィス・フル・ハラと、アーティスト、文化人類学者の視点を持つ廣田さん、そしてインドネシアや日本を中心に多数のアート・プロジェクトに携わってきた私は、今回の事業でもそれぞれ異なる役割を担っており、各自が培った知見を活かしてプロジェクトを深めることが求められています。その課題をいかにうまく遂行できるかという点は、私自身非常に興味深く感じますし、また一番大事にしたいと思っているところです。

 

―――今回のプロジェクトを実施するにあたり、特に楽しみなことや、期待することがあればぜひ教えてください。

 

あいちトリエンナーレ2016「ルル学校」の様子(写真提供:ruangrupa)

 

バルトロメウス 私と廣田さんが関わったあいちトリエンナーレ2016の「ルル学校」の時のように、参加者の皆さんの中から「文化のエージェンシー(仲介者)」が生まれてくれたら嬉しいと思っています。アートというと、どこか難しそうで、遠い存在に感じる方もいるかもしれません。しかし実際は、私たちの誰もが、身近な物事をきっかけに自分自身の手でアートを作り出し、そこから新しい出会いや経験を得ることができます。名古屋に親しみをもつ皆さんが、プロジェクトをきっかけに自由な視点でこの土地を見つめ直し、そこで得られた発見や感動を今後様々な方法で表現してくれる「仲介者」となってくれたら、それはプロジェクトの一つの到達点となるでしょう。

 

私たちのプロジェクトを通じて、たくさんの方たちが出会い、会話を交わし、新たなコミュニティが生まれることを心から楽しみにしています。

 

 

 


 

飯田街道:聞き取りアートプロジェクト 実施スケジュール

 

  • 飯田街道散策ツアー:2024年2月3日(土)、4日(日) 10:00-12:00
    定員各日15名(10歳以上。中学生以下は成人の同伴が必要)
    参加無料、要申込
    参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます)

 

  • オープンスタジオ:2月9日(金)~2月13日(火) 14:00-18:00
    会場:新栄のわ205共同スタジオ(Googleマップ

 

  • 版画ワークショップ:2月17日(土)、18日(日) 13:00-16:00
    会場:パルル、新栄のわ205(Googleマップ
    定員各日15名(10歳以上。中学生以下は成人の同伴が必要)
    参加無料、要申込
    参加申し込みフォームはこちら(Googleフォームが開きます)

 

  • プロジェクト展示:2月21日(水)19:00-21:00
    会場:パルル(Googleマップ
    オープニング・パーティ/アーティスト・トーク:2月21日(水)19:00-21:00
    参加無料