【レビュー】「劇団あおきりみかん ワークショップ」(Japan Live Yell project in CHUBU) 文:西野 勇仁/演劇ニッケル 主宰・岐阜県高校教諭 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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演劇

2024.1.18

【レビュー】「劇団あおきりみかん ワークショップ」(Japan Live Yell project in CHUBU)
文:西野 勇仁/演劇ニッケル 主宰・岐阜県高校教諭

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤは、「Japan Live Yell project in CHUBU」プロジェクトの一環として、名古屋を中心に数多くの公演を行う劇団「劇団あおきりみかん」と協働し演劇ワークショップを開催いたしました。今回は、全5回のうち、演出家の鹿目由紀さん、Yundong HwangさんによるWSを見たレビュー執筆者によるレポートをご紹介します。

 

【劇団あおきりみかんワークショップ】

日時:2024年1月6日(土) ~9日(火) 
会場:G/PIT
 ・川本麻里那(劇団あおきりみかん)演技ワークショップ
 ・鹿目由紀(劇団あおきりみかん) 演出ワークショップ
 ・Yundong Hwang 演出・演技ワークショップ
 ・カズ祥(劇団あおきりみかん) 演技ワークショップ
 ・松井真人(劇団あおきりみかん)舞台美術ワークショップ
企画:劇団あおきりみかん

 


 

■西野 勇仁 演劇ニッケル 主宰・岐阜県高校教諭

「演出ってそもそも何だろう…って。それを知りたくて。」

冒頭の座談、参加者の一人が参加動機を話すと、皆が同じ表情で笑った。

皆、同じ気持ちだったのだ。

 

緊張した空気が少し和らいだところで、劇団あおきりみかん主宰、鹿目由紀さんによる演出ワークショップは始まった。

 

「演出」のワークショップは珍しい。

テキストの読解、現場の作り方、演出的技法、照明音響の効果…、内容が多岐にわたる上、そもそも「演出」という概念が漠然としている。

しかし今回、短い時間の中ではあるが「演出」について考えることで、演劇の本質、そして演劇が地域に何をもたらすのかが見えてきた。

 

 

鹿目さんは始めに、演出家の心構えを話した。

「大切なのは、いかに複数の脳で考えるか。人の力を借りて、自分も考える。自分の考えを話して、相手の考えを引き出す。そうした相互作用で作るのが演劇であり、その指針を示すのが演出家である」と。

 

 

つまりは、コミュニケーションである。

もちろん「コミュニケーション」と一括りに言っても実際には様々な要素がある。だが、まずは「褒める・聞く・自分を知ってもらう」ことが、座組づくりの第一歩だ。

 

 

そうした説明の後、実践に移った。

テキストに対して「目的(=どう見えるようにしたいか)」を定め、短い会話劇を作る。

「朝の挨拶をして、一緒に帰ることを約束して別れる」というだけのテキスト。

アイデアの出しようもあるが、漠然としていて迷走する危険もある。

 

しかし、先の説明もあってか、どのグループも自然と良好なコミュニケーションを取っている。

 

「めっちゃ面白いじゃないですか。」

参加者が、初対面の相手にも関わらず、どんどんポジティブな言葉をかけている。

「じゃあ、こうしたらどうですか?」

アイデアを出し合っている。

 

 

演出ワークショップを受講するような人だから、自然に出来ることなのだろうか?

いや、ワークショップ開始前の静かな空気を鑑みれば、きっとそうではない。

目的を定め、コミュニケーションのポイントを絞ったからこその結果だろう。

 

指針があって、ポジティブな人間関係を作れれば、プロジェクトはおのずと軌道に乗る。

大切なのは、そうした指針の「共有」であり、それを成すのが演出家である。

 

 

また別の参加者は、

「自分の理想を追って指示し過ぎてしまう。役者をもっと自由にさせるにはどうしたら良いのか」と投げかけた。

 

その答えは、韓国から訪日した演出家「Yundong Hwang(ファン・ユンドン)」さんによる演技・演出ワークショップと合わせることで、明確になる。

 

 

ファンさんは、いくつかの身体的なワークの後、インプロ(即興劇)の手法によるワークをおこなった。

相手の動きに合わせて、感じたままに動いていく。

次第にテンポが上がっていくと、はじめは「何かを表現しよう」としていた参加者たちが、「感じること」に集中していく。

自らの「作為」から、解放されていく。

 

 

ファンさんは座学の中で語った。「演劇は、協働の芸術である」と。

とどのつまりは、これに尽きるのではないか。

 

共有のためには、共に「感じる」必要がある。

感覚を、自己を、世界や他者に対して「開き合う」のだ。

 

 

こうした力は、実社会にこそ必要だと思う。

演劇的素養を持った人が増えることは、「協働のプロフェッショナル」が増えるということ。

演出家は、寄る辺ない時代を共に歩むための、新しいリーダーとなり得る。

 

今回、公演でなくワークショップだからこそ見えてきた演劇の本質があった。

そうした意味で、社会的にも芸術文化的にも、広がりのある企画であった。

 

(写真:羽鳥直志)

 


 

本事業は名古屋を主な拠点として活動を行う文化芸術の実演団体、アーティスト、制作者等のマネジメント力向上をめざすものです。クリエイティブ・リンク・ナゴヤは、音楽、演劇、舞踊、伝統芸能などの実演芸術による「公演・ワークショップ」の企画を公募し、3件採択しました。本イベントはそのうちの第3弾として、名古屋を中心に数多くの公演を行う劇団「劇団あおきりみかん」と協働し開催いたしました。

 

本事業名:JAPAN LIVE YELL project in CHUBU
本事業主催:クリエイティブ・リンク・ナゴヤ、劇団あおきりみかん、愛知芸術劇場、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会
本事業助成:文化庁文化芸術振興費補助金(統括団体による文化芸術需要回復・地域活性化事業(アートキャラバン2))|独立行政法人日本芸術文化振興会
事業名:JAPAN LIVE YELL project