【CLN活動レポート】つながる∽つなげるトークシリーズ “リンク・カフェ”  ♯1 トークイベント「アート×社会連携とは?他地域の事例から探る」 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

活動レポート

社会連携事例紹介

社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)

2024.4.10

【CLN活動レポート】つながる∽つなげるトークシリーズ “リンク・カフェ”  ♯1 トークイベント「アート×社会連携とは?他地域の事例から探る」

 

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤの助成・支援事業の一環として開催した「つながる∽つなげるトークシリーズ“リンク・カフェ”。3月10日に「♯1 アート×社会連携とは?他地域の事例から探る」を実施しました。
大阪府堺市、静岡県で先駆的な活動に取り組む方々を迎え、地域とアート・アーティストがどのようにかかわり、つながっているのかご紹介いただいた当日の模様をお届けします。

 

つながる∽つなげるトークシリーズ“リンク・カフェ” 
♯1 トークイベント「アート×社会連携とは?他地域の事例から探る」(イベント詳細についてはこちら

日時:2024年3月10日(日) 14:00~16:00
場所:長者町コットンビル

 

プログラム
【1】 堺アーツカウンシル 事例紹介
    堺アーツカウンシル プログラムディレクター 上田假奈代氏
【2】 アーツカウンシルしずおか 事例紹介
    アーツカウンシルしずおか プログラム・ディレクター 北本麻理氏
    事例紹介「熱海怪獣映画祭」 代表 水野希世氏
【3】 クリエイティブ・リンク・ナゴヤ 「社会連携」採択事業紹介
    クリエイティブ・リンク・ナゴヤ ディレクター 佐藤友美
【4】 参加者からの質疑応答

 


【1】堺アーツカウンシル 事例紹介
   堺アーツカウンシル プログラム・ディレクター 上田假奈代氏

 

■協働で文化芸術を支える、日本で唯一の堺モデル。

アーツカウンシルは地域によって形がいろいろありますが、堺モデルはとても珍しい組織です。文化芸術審議会があり、それとは別に専門人材として私のようなディレクターがいて、堺市の文化課職員が一体となって「堺アーツカウンシル」として活動しています。堺市で文化芸術に携わる人を支援して、子育て、教育、福祉、都市の活性化といった社会的課題を解決しましょうというのがミッションです。メンバーにはそれぞれ専門性があって、PD(プログラム・ディレクター)の私は詩人で、PO(プログラム・オフィサー)にはコミュニティーデザインやアートプロジェクト、調査研究を担う人もいます。

<堺アーツカウンシル組織図>

 

 

■文化施設職員のスキルを向上させ、地域とアーティストをつなぐ。

堺アーツカウンシルは、「文化芸術活動の支援」「文化芸術施策の推進」「調査研究・情報発信」の機能を持っています。文化芸術施策の推進で大切なのは、とにかく芸術活動の伴走をすることですね。補助金申請の相談に乗ったり、勉強会・交流会といった活動する人たちのネットワークを広げる、井戸端会議のような場もつくっています。
文化芸術施策の支援では、モデル事業として、堺市文化振興財団と協働して市民に接する機会が多い文化施設の職員に向けた研修を行っています。2年間の研修で、1年目は座学でアウトリーチや社会包摂、ワークショップについて学び、2年目は地域でヒアリングし、アーティストを選定、企画を実施します。たとえば、高齢者デイサービスと就労支援B型の施設でダンサーや音楽家が体操の歌と振り付けをつくり動画にしたり、子ども食堂ではSNSが身近になり誤解が生まれやすいと聞き、演劇のワークショップを行いました。

 

<事業の様子>

 

 

■アーティスト同士の出会いの場から、ネットワークづくりへ。

補助金の事業枠は、10万円のスタートアップ支援事業から地域文化活動ステップアップ支援事業の50万円、舞台芸術などに向けた100万円~300万円までの特別補助と区分けがあります。スタートアップで採択された事業には、書の教室の方から相談を受け、福祉施設でのワークショップを提案、実施した例や、源氏物語を題材に源氏香を行う事業もありました。
堺ではアーツカウンシルの仕事は地道だと感じています。市民の方の発表の場も大阪市が多く、堺市内でされる方が少ないのが現状です。小さいながらも地元で発表する場がつながっていけばいいと思っています。最近では芸術活動をする方々が交流会でつながることもあり、協働やネットワークができてきました。中間支援を担う私たちが、出会う場や機会をつくることを大事にしていきたいと思います。

 

~クリエイティブ・リンク・ナゴヤ コーディネーター半田が聞く!深堀りトーク~

 

半田: 上田さんは補助金の申請についても相談を受けていらっしゃいますが、やはり団体のビジョンや今後取り組みたいことを書類に落とし込むのに苦労される方が多いのでしょうか?

上田: そうですね。何かと「×(掛ける)」ことをしたいけど、どうすれば見つかるかという相談には福祉施設を紹介しました。アマチュアオーケストラの方は、コンサートと何を掛ければよいか納得のいくものを見つけるために、勉強会や相談会に足を運んでくれました。3年目には舞台の反響板に市の観光名所を映したり、小学生や障がいがある方に招待券を贈る素晴らしい取り組みになりました。

半田: お話の中で割愛されていた社会包摂支援についても教えていただけますか?

上田: 年度初めに文化施設の新入職員向けに堺市の文化推進計画の説明と社会包摂の研修をしています。劇場法ができてから、“劇場を地域の広場に”“市民との出会いを大切に”と考え方が変わってきたことを知ってもらいたい、日々の業務は大変だと思うけれど、もう少し幅を持って考えられるようになればと始めました。研修では社会包摂を考えるコツとして、立場を入れ替えて想像できるかとか、プロセスを大事にするとか、正解はないから試行錯誤しながら取り組みましょう、何よりも風通しのよい職場をつくりましょう!と話した後、「社会包摂しりとり」をしました。たとえば、「みんなイキイキ」といったら、次は「きまえよく」とか、自分なりの社会包摂のイメージで言葉をつなぐのです。楽しみながら、というのが大事ですね。

 


 

【2】アーツカウンシルしずおか 事例紹介
   アーツカウンシルしずおか プログラム・ディレクター 北本麻理氏
   事例紹介「熱海怪獣映画祭」 代表 水野希世氏

 

■先導的な事業で、住民のアートプロジェクトを支援。

まず、アーツカウンシルしずおかの事業についてご紹介します。
事業の中心は「住民主体のアートプロジェクト支援」です。助成制度である「文化芸術による地域振興プログラム」のほか、「マイクロ・アート・ワーケーション」という住民プロデューサーの発掘などを目的とした事業や、「クリエイティブ人材空き家等活用モデルプログラム」という先導的な事業を行っています。
さらにコーディネート事業として、相談窓口やアートプロジェクトを企画する講座を開催したり、アーティストとのマッチングなども行っています。
最後が調査・研究事業で、「超老芸術」もその事業のひとつです。犬小屋を、松本城をモデルにつくる、こういった文化芸術活動をされている方をPDが訪ね、ウェブや展覧会で紹介しています。「高齢者」というラベル付けを超えた、文化芸術活動をされている人たちの面白さを知っていただく事業です。

<超老芸術>

 

■誰もが持っているアートを引き出し、創造的な地域づくりへ。

次に、マイクロ・アート・ワーケーションについてご説明します。これは、静岡県でまちづくりや福祉活動をされている民間団体や自治体の皆さんにホストになってもらい、県内外のクリエイティブ人材の方々に、旅人として滞在していただく事業です。作品をつくることが目的ではなく、まちの人と出会い、今まで気づかなかったまちの魅力を、それぞれの旅人としての視点で発信してもらうことを成果としています。
アーツカウンシルしずおかでは、視点を変え、豊かな発想力を用いて課題を捉え、誰もが自由な立場で主体的に表現し、共創作業を行うことをアートプロジェクトだと考えています。アートというものは、アーティストの中にだけあるのではなく、それぞれの人にそれぞれのアートがある。そのアートを引き出す、誰かのアートに気づくことがアートプロジェクトなのだと思います。

 

■2023年度「文化芸術による地域振興プログラム事業」

半田: 住民主体のアートプロジェクト支援事業の一つである「熱海怪獣映画祭」について、住民プロデューサーの水野希世さんにお話しいただきたいと思います。

水野: 熱海怪獣映画祭は昨年10月で6回目を迎え、私は熱海と映画祭をつなぐ役割を担っています。6年前、熱海駅近くにある、クリエイターさんが沢山集まるショットバーで、夜中2時頃まで残ったお客さん2人とママとが、何か楽しい事をしたいね!という話が出た事が始まりでした。最初、映画祭をやってみようという話しから、実は、熱海はゴジラ、キングコング、ウルトラマンの舞台になっている怪獣の聖地でガメラの脚本家の方が、「熱海って実は怪獣の聖地なんだよ」という話から、「怪獣映画祭」面白い!やってみよう!という事になりました。メンバーの中には、プロのイベンターは今まで居ません。1回目は、お店のお客さんである、クリエイターさんをママが束ねて開催され、今も、怪獣ファンや、熱海で何か面白い事をしたい方、など、色々なメンバーが集まり、「1年に1度の大人の文化祭」のような感覚で、やっています。

 

<映画祭の様子>

 

~クリエイティブ・リンク・ナゴヤ コーディネーター半田が聞く!深堀りトーク~

半田: 熱海怪獣映画祭には、どういった方が来られますか?

水野: 怪獣好きな50代くらいの男性が多いですね。県外からも来場されます。

半田: 会場は何カ所かあるのですか?

水野: 今年はホテル大野屋、熱海芸妓見番、熱海親水公園の3箇所あり、ホテルを借りて怪獣映画の上映やワークショップなどを実施しました。私がリーダーになってからは、野外で怪獣ビール祭りをやっています。というのも、“怪獣”と“映画”だと興味を持つ人も限られ、地元の人たちは何をやっているかよくわからないと思うのです。私は生まれも育ちも熱海なので、地元のみんなに参加してもらいたいという思いがあり、どうやったらかかわってもらえるかを考えました。熱海では毎年ビール祭りが開催されているので、怪獣映画祭でもビール祭りを取り入れることにしました。

半田: 怪獣映画祭に対して地元の方の見方に変化はありましたか?

水野: ビール祭りを始めてから、住民も映画祭に興味を持ち始めています。熱海ではいろいろなイベントが開催されますが、やはり地元の人間も主になりうごいているという事が大切だと思います。

 

 


 

【3】クリエイティブ・リンク・ナゴヤ 「社会連携」採択事業紹介
   クリエイティブ・リンク・ナゴヤ ディレクター 佐藤友美

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤの社会連携採択事業ですが、22年度は中川区で倉庫を改造した「美術×国際交流」のプロジェクト、北区では「美術・舞台芸術×まちづくり・観光・教育」として街中でアート祭りを行う事業など、17事業が採択されました。
23年度は、海外出身のアーティストがワークショップや鶴舞公園でパレードを行う「美術×まちづくり・国際交流・教育」の事業や、日本人とインドネシア人のアーティストが、飯田街道の歴史を版画で表現する「美術×国際交流・教育」の事業など、18事業が採択されました。
以上、この2年間で採択された社会連携のプロジェクトについてご紹介しました。

 


 

【4】 参加者からの質疑応答

質問 皆さんにお尋ねしたいのですが、何年くらい継続して支援していこうとお考えですか?

回答
上田: 堺アーツカウンシルでは、スタートアップのみ同一事業で3回、規模の大きい50万円、300万円の事業に制限はありません。継続の場合は、前回からの改善点、工夫を重ねているかどうかが審査員の見るポイントになりますね。

北本: アーツカウンシルしずおかでも、22年度の採択から同一事業で5回までとなっています。ただ、事業を続ける中で、必ずしも同じことを続けているわけではないことを期待していますし、キャリアを積んで次のステップに行く時にも公的支援は必要ではないのかという議論は常に起こっています。

佐藤: クリエイティブ・リンク・ナゴヤは、今のところ継続事業に対する制限を明確に定めていません。最終的に助成金がなくてもやっていけることが、本当の持続性に貢献することだと思うので、初動でどれだけ一緒に考えて自走できるようにするか、その仕組みを検討していければいいと思っています。

 

質問 アーツカウンシルしずおかのマイクロ・アート・ワーケーションの好事例について教えてください。

回答
北本: 三島市内でコワーキングスペースやゲストハウスの運営をしているホストの方が、アーティストである旅人との出会いをきっかけに、空き店舗を使った芸術祭を立ち上げた事例があります。移住者支援を軸に会社経営をしているホストの方はもともとコンサルをされていて、ビジネス的な視点も取り入れた芸術祭としてスタートしました。