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2024.9.12
採択事業者インタビュー① ささしまスタジオ「公共空間における新たな文化芸術活動空間の創造〜ささしまライブ地区における野外劇のプロデュースを通じて〜」
(左から)平塚直隆さん、志水久雄さん 野外劇会場となるキャナルパークささしま1号公園にて
クリエイティブ・リンク・ナゴヤでは2024年度も助成事業を実施しています。そこで「社会連携活動助成」で採択された事業(助成A×5件、助成B×1件)を6回にわたってご紹介します。社会連携活動助成A・Bの詳細はこちらをご覧ください。
第1回はささしまスタジオの志水久雄さん、劇団「オイスターズ」の座付き作家・演出家の平塚直隆さんにお話を伺いました。
■ 事業名 公共空間における新たな文化芸術活動空間の創造〜ささしまライブ地区における野外劇のプロデュースを通じて〜
■ 採択区分 社会連携活動助成B
■ 採択金額 ¥2,000,000
■ 実施者名 ささしまスタジオ(有限会社イメージ設計)
■ 活動領域 演劇
■ 連携先の分野 まちづくり
■ 期日 2024年9月17日(火)~23日(月・祝)
■ 会場 ささしまライブ内 1号公園・名古屋高速高架下広場
【実施者プロフィール】
名古屋駅の南、ささしまライブ地区は水辺と公園を持つ新しいまちとして注目され、また、隣接する中川運河周辺も水辺空間の整備が進み、芸術文化エリアとしての発展が期待されている地区。そのような地区近くの木造倉庫をブラックボックス型の多目的スタジオにコンバージョン。主に演劇公演が行われる他、各種の演劇ワークショップを主催するなど、当地の芸術文化活動のサポートに努めている。将来的には地域のまちづくり拠点の1つに育つことを視野に入れて活動している。
―――今回の事業がどのようなものか、あらためてお教えください。
志水 今回のプロジェクトは、「公共空間における新たな文化芸術活動空間の創造〜ささしまライブ地区における野外劇のプロデュースを通じて」という事業になります。市民のためのものである公共空間をどのように使うか、また市民とのつながりをどのように作っていくかという企画になります。
ささしまスタジオ 志水久雄さん
芸術文化の助成は、アーティストに対する作品制作に対するものがとても多いのですが、今回は社会連携というのが助成事業のテーマだったので、私もスタジオを作ったりまちづくりに関わったりすることもあって、そういった経験を少しは活かせる企画かなと思って今回の事業を立ち上げました。
名古屋の公共空間というと、久屋大通公園とか、若宮大通公園などがあるのですが、名古屋駅周辺にはないんです。栄だけでなく、名古屋駅の近くにもパフォーマンス空間があればいいと思っていました。ささしまライブ地区もにぎわい作りということを常に掲げているところなので、市民レベルで使える公共空間やパフォーマンス空間が構築されて、芸術文化全体が活性化していけばいいと、この企画自体を作り上げていきました。
公共空間はいろいろな条例や法律によって管理されている場所で、野外劇をやる場合、一筋縄ではいかないのは承知の上で準備を始めました。当初は名古屋高速道路の高架下広場で、平塚さんに演劇をやっていただくことを予定していましたが、音の制限があったり、管理区分が煩雑であったりで実現せず、1号公園に場所を移して舞台を作り上げていくことになりました。ですので、当初、考えていた半常設的なパフォーマンス空間は作れなくなったのですが、平塚さんが公園全体を使う、つまり空間をめいっぱい使う展開を考えて下さっているので、結果的にはそれでよかったかなと思っています。
―――野外劇を上演しようとしたきっかけをお聞かせください。
志水 ささしまスタジオを開設して5年くらい経ち、個人や団体の方がさまざまな公演をしてくださっています。しかし、ささしまスタジオの中は入っても100人くらいですから、お客さんが限られてしまいます。
また、時代によって演劇のテーマ、舞台のテーマというのも変わってくるのですが、どうしても今、SNSの時代ということもあって自分たちの内面、内輪の話が多くなりがちです。内面の悩みを表出するという、スタジオの中で完結する、仲間内に見せる芝居だけではなくて、社会性というか、もう少し世の中の動きというものに接点を持った方がよいのではとずっと思っていました。それで舞台を外に出してみたらどうだろうかと。野外劇そのものは昔からあり、作劇するにあたって常に社会というものが意識上にしっかりあって、神社でやったり、路上でやったりされてきたのですが、今回は名古屋の演劇を社会に持ち出すために、野外劇をささしまライブの公園でできないだろうかということになりました。
野外劇になれば非常にオープンな公共空間で上演しますから、非日常的で、開放的でもあり、みなさんがいろいろな形で目に触れることができるので、チケットを買った人だけではない、たまたま通りがかった人も「何をやっているのだろう?」と見てもらえることもあります。このように外に出していくことで、たまたま居合わせただけの人にも演劇を見てもらえるということが、演劇をする人たちにも刺激を与え、自分たちの活動に幅が出てくるという相乗作用もあるのではないかと思います。多分若い方たちは野外劇なんかやったことないだろうし、こんなことできるのかって感じていると思うんですけど、でも全国的に見れば、野外劇はいろんな場所、かたちで上演されているので、できたら野外劇をムーブメントとして、一つのジャンルとして定着させる、一つのモデルとして今回は野外劇を企画しています。様々な場所をお借りして演劇を上演できることをかつての名古屋の演劇人の方に思い出していただくためにも。
―――会場となるささしまライブおよび中川運河はどのような場所でしょうか。
志水 ささしまライブには公園があって、緑地があって、堀止があって、中川運河から海につながるところなのですが、いろいろな管轄があり、今も高架下広場など整地工事を行っている場所もあります。正式に言うと、土地区画整理事業中ということですね。本来、公園は都市公園法や都市公園条例、施行細則など3つ、4つの法律で管理されていて、名古屋では公園が完成すると、普通は緑政土木局に移管されていくことになります。しかしまだそこには委託されていなくて、ささしまライブ24総合整備事務所が開発中の公園として管理しています。
あと溜池である堀止は、緑地部分を名古屋港管理組合が、公園の真ん中を東西に走る高速道路は名古屋高速道路公社が、水系施設や水が流れているところは名古屋市上下水道局が管理しています。堀止からは船も出ていて、そこは本庁の名港開発振興課が管理しているのですが、実際の船の運航は名鉄観光のグループが管理しているということで、事業全体が整備中である上にさまざまな関係団体が管理していて、イベントを一つやろうとしても一つだけの話では済まない、という場所になります。
だからそれら全体を市民の方たちが理解して事業を行うことが難しい。一つの公園として「キャナルパークささしま」という愛称をつけた場所なので、その一環の賑わいづくりに貢献するための一つの手段、方法として今回の事業を企画しているのですが、やはりいずれはワンストップで手続きができる、使いやすい市民の空間になるようにしたい。それはただ行政だけではできないので、さまざまなきっかけを機会に、協力して一緒に考えながら、具体的な事例をもとに、ワンストップな窓口を作っていただけるように向かえばいいかなと思っています。
―――今回の野外劇の作演出はオイスターズ劇作家の平塚直隆さんが担当されますが、ささしまスタジオの志水久雄さんと平塚直隆さんとはどのように出会われたのでしょうか。
志水 オイスターズの平塚さんと出会ったのはここ3年ぐらいのことです。最初はオイスターズの稽古場としてささしまスタジオを何回か使っていただきました。その後、愛知県芸術劇場で上演された公演なども拝見して、これは面白いなと思い、オイスターズさんに何か一緒にやれませんかという話をしました。それが2023年の4月と2024年の1月に2回実施された「オイスターズがささしまスタジオで作るワークショップ公演」です。地域の演劇を盛り上げていこうということで、いろいろな人たちがワークショップに関わってくれたのですが、一つの劇団だけでなく、公募によって多様な方たちに参加していただくというメリットが大きかったです。
平塚 ワークショップをしたのは、ささしまスタジオの稼働率が芳しくなく、自分たち界隈ではない人にまず知ってもらわないとダメだなと思ったからです。公募でワークショップをしてさまざまな劇団に所属している人が来れば、その劇団がささしまスタジオを使うかもしれないと考えました。
志水 今後また企画を増やしていけるように模索中で、スタジオの中だけではなく野外劇も第2弾、第3弾とできたら良いと思っていて、企画の大小はあると思いますが、公共空間を使った野外劇をスタジオがプロデュースするという形を考えています。スタジオの中だけで演劇というものが完結できるとは思わないので、むしろプロデュースの会社として、ささしまスタジオも発展できるといいですね。
オイスターズ劇作家・演出家 平塚直隆さん
志水 ささしまスタジオのオープンが2019年の夏で、テスト期間中ということで床とか機材とかを整備しつつ、暫定的に僕の周りの人たちにちょっと使ってみてという感じで貸していて、2020年1月から本格始動を予定していました。けれど年末からコロナがおかしくなってきて、年明けからパンデミックになって予約は全部止まり、2年間くらいほぼ稼働率ゼロでした。
平塚 僕も最初はささしまスタジオを知らなかったので、稽古で空いている施設を探していたらここを見つけたのですが、僕の中では民間の劇場の中では一番使いやすいです。天井が高いっていうのがとにかくデカい、だから今となってはささしまスタジオ一択ですね。ただ僕らだけで使っていても年間の稼働状況を埋められないので、たくさんの人が使ってくれないと無くなってしまうという危機感から、「名古屋でいい劇場ないですか」と聞かれるたびに、ささしまスタジオを紹介します。
またオイスターズで韓国公演をしたときに「ソウルの大学路(テハンノ)は劇場がどんどん増え、どんどん広がっている。劇場ができるとその隣にカフェやら雑貨屋やらが増えるから、みんな劇場が欲しいんだよ。」と耳にして、なるほどと思いました。「この劇場も公演が無い日はフリースペースになっていて、みんなここでコーヒー飲んだりしているんだよ。そこにチラシを置いといたら、明日何やるのかなって見られるじゃん。」と。
ささしまスタジオは、ここに劇場があるとは知られていないけど、劇場中心に人が流れることに、一役買いたいなと思っています。名古屋駅からの人流が劇場中心に集まって、周りにカフェなど増えていったらいいなと。
志水 ささしまスタジオは稽古場としての利用も多くて、舞台空間的は横8m、縦10mぐらいで、舞台のサイズとしては実際に使う普通の小劇場ぐらいの広さでフルに動けます。名古屋はエンターテイメントの芝居が多いので、刀を振り回したり、飛んだりというのが結構あって、多分その意味で高さが欲しいのだと思います。そういうわけで、エンターテイメント系の団体がよくささしまスタジオを稽古場として使ってくれています。そのような団体は大きいところで40人ぐらい。そういうところが、2週間とか3週間とかスタジオを連続して借りて、舞台道具や衣装関係も持ち込んで、役者さん、スタッフのチームが一日に何チームも時間差で稽古しています。
名古屋の公立の稽古場というと演劇練習館「アクテノン」がありますが、予約がいっぱいで、そこまでの連続使用は多分できないと思います。また、荷物やら衣装やら物を置いておけないので、毎日回収してまた持ち込んでというのが、本番が近くなってくると、本読みだけやっているわけではないので、劇団さんもだんだんきつくなってくる。しかし、ささしまスタジオは民間なのでそこら辺の運用は自由です。
明日(注:インタビュー時)からですけど、エンターテイメント系の方が芝居の始まる前から12日間連続で平台を組んで、舞台と同じサイズで練習するのですが、だいたい1日に30人か40人くらい入れ替わりで来て稽古をやっているのですね。なので、それを掛け算して、ワークショップとかも全部含めるとだいたい5000人くらい去年来ているんです。ささしまスタジオに出入りしているんですよ。スタッフも含めて。だからなんか、普段は地域としては閑散としたような場所なのだけど、演劇関係で、一つの拠点に年間5000人が出入りしているのはそれなりなことだと思っています。さらに公演も増えて1万人来るのだったら「隣に喫茶店があってもいいね」と繋がってくれるといいなと僕は思います。
平塚 早く来て時間潰せないって結構面倒くさいなとか。あと面白い芝居に限って飲んで帰りたいし、そうすると名古屋駅まで30分か、面倒くさいなと。ささしまスタジオに来るときはみんな車で来ているんですよね。名古屋駅まで歩くっていう選択肢はなかなかないかな。
志水 確かにもう5000人くらい増えれば、スタジオ隣の喫茶店も商売としても成り立ってくるのではないかと思います。
―――今回、幅広く出演者を募集されたようですが、どのような人物からの応募を期待していましたか。また実際に人が集まりましたか。
平塚 活動を知ってもらうという宣伝効果も含めて、間口を広くしたいなと思いました。だから公募で、未経験者も受け入れてできるだけハードル低くしようと。ワークショップのときからそうなのですが、知らない人に会いたいので、来てくれた人を見て、なんとかしますという気持ちでいつもいます。
結局10日間募集して、21人を採用しました。下は19歳、上が60歳とかそんなものでしたね。人が多く集まったのは、ささしまスタジオでワークショップを過去2回やった影響でしょう。前回のワークショップでは40人いましたが、その中の何人かは今回も来てくれました。
あと、会場になる1号公園は18時以降に音出しができません。やはり野外劇ではバーンと派手な音を浴びさせたい。僕が見てきた野外劇はみんなそうでした。だからマイクによる拡声や、生演奏ができないと言われて、ではそれを逆手にとってセリフも歌も全部生声、とにかく肉体使えばいいってことかと。もう効果音も歌もBGMも、全部役者が言えばいいんだなと考えました。そのためには歌える人にも来てもらいたいなと思い、声楽が学べる学校に通っている人に協力してもらったりもしました。
野外劇を上演するにあたって各方面にアンテナを張っていくと、昔のシェイクスピアの劇でも農場や畑の中で上演していたということを知りました。演出は気取って作り込んだりせず、公園なら公園でそのまま上演したほうが逆によいと。音も、なんなら照明もなくてもよいかなと思いました。さすがに夜なので照明は必要ですが、できるだけ素朴にやろうという気持ちになっていきました。
照明も音響も使わないのならば昼間に上演することはできますが、野外劇の別の魅力はやはり日の光が変わっていくのを感じることなんですよね。なので、僕としては夕方が一番いい。太陽が変わっていくから。最初に志水さんと会場を下見した時に1号公園向かいの高いビルが西日で光っていて、めちゃくちゃかっこよかったんですよ。それを狙いたく、西日が差す18時開演にして、終演くらいになると暗くなるという時間設定にしていたのですが、そうすると平日は役者もお客さんも集まらないという難しさがあり、平日は19時開演です。
キャナルパークささしま1号公園に臨むささしまライブビル群
―――今回、過去作を野外用に書き直すとのことですが、どのような内容になりそうですか。また、オイスターズといえば会話劇が有名ですが、今回の演出の見どころをお聞かせください。
平塚 脚本は最初思い描いていた戯曲があったのですが、少人数で濃厚な会話劇だったので、試しに1号公園でシミュレーションとして稽古してみたところ、やはり間が持たないと思いました。大人数で行う劇がいいなと。そこで何年か前に市民劇で書いた本があって、たくさん人が出てくるので場面を名古屋に置き換えて書き直そうかなと思っています。
内容はRPGゲームのように冒険に出るお話です。勇者という役割りは、世界を救うために魔王を倒す目的を持ちますが、朝起きたら突然「お前は勇者だ。勇者なのだからやらねばならない。」とその使命を与えられたところで、「そんな急に勝手な期待でどうして自分がやらねばならないのか。」と、ぐずぐず全く旅に出ないという話です。
強制的にやらされる、過度な期待をされても困る。でも、ほのかに現実でもそうかもしれないと感じます。こういう仕事だからとか、やることに懐疑的になっていても、結局やっているじゃないですか。
やはり野外劇では、設定を無理して例えば喫茶店とかにしても意味がない。野外劇ならではのことがやりたいから、できるだけ劇場ではやれないことをやりたいです。とにかく広いし、ありえない奥行きがある。普段でも高くて奥行きのある劇場を好んでいるけど、それはなぜかといえば、やはり人は闇から出てきてほしいんですよ。人がドアからガチャっと入って来るいうのは僕の舞台ではやらないんです。だからできるだけ天井は高くして、遠くの方から来て、闇の中から人が現れてほしいといつも思っていたので、では野外ならば、たとえば役者はずっと向こうから歩いてくるかもしれないというか、通行人かなと思っていたら、どんどん近づいてきて、話し出して実は役者だったのかとか、あの人いつどこからいたのかとか。突然車から人が降りてくるということも。そういう演出もできるなと。
視界のなかにあるものは、ないことにはしたくないってこと。だから変に隠したりも、壁を立てたりもしたくないんですよ。もしかしたら普通の公園なので下校中の学生がそこら辺を歩くかもしれないし、そうするともはや誰が役者かわからなくなるとか、何が演出かわからない。野外劇だから声を張るとかも不自然に感じるから、わざわざ距離を離してみるとかもしないといけないな、とも思うんですよね。遠くにいたら自然と声を張り上げるので。
普段は話から考えて舞台セットを考えますが、今回は逆です。話の内容が固まっていませんが、やりたいことはある。本の内容というよりも本当に演出なんですよ。野外劇の中で人がこうやって来るという想像だけはありますね。
―――名古屋の演劇文化について伺いますが、名古屋を拠点とする劇団の活動にはどのような特徴がありますか。また、今回野外劇の上演を行うことで名古屋の演劇文化になにかしら影響を与えることはありそうですか。
平塚 名古屋の演劇人って、最近全国のコンクールでも割と賞を取りまくっているから、全国的な認知は高まっていると思います。あと、東京の人からするとやはり名古屋は独特だよねとか。東京とかだとなんか今流行りの舞台みたいなものがあるけど、名古屋は独自で歩んでいる。だから北村想さんやら天野天街さんやら才能のある演劇人が生まれてくる。
僕がやりたいのは、名古屋で初演してブラッシュアップして、次の年に東京でやるということ。でもまだ僕はちょっとギラギラしていて、上昇志向もあって、やっぱり東京で新作を発表したいんですよね。東京で再演してもあまり評価されないという、あまり賞に引っかからないっていう風潮があるじゃないですか。本当は名古屋で1回やって、お客さんの感覚を見て、次は東京公演というのがやりたいんですけどね。
それでも東京では、僕の作風は、多分名古屋独自だと思われていて、オイスターズはやっぱり独特だよねという印象になっています。それは何をやろうが、多分染み付いてしまっていますね。分かりやすいところで言うと、名古屋弁で喋ったりもします。
名古屋は演劇界より街の方が規模がデカいので、劇場の外にいる人たちに知ってもらった方が、観劇人口も増えるかもしれない。だから今回は劇場の外に出張しているみたいな感じです。普段、観劇に来るのはなかなかハードル高いのですが、昨年の揚輝荘での公演*のように、建築物に興味がある人が来て、「面白いな演劇。じゃあ、また行こう。」といった逆の人の流れというのは確かにあります。ふらっと公園に来たらお芝居をやっていて、そこから近くに劇場があるのなら行ってみようか、という流れになればいいなと。
* 2023年度クリエイティブ・リンク・ナゴヤ パイロット事業として「オイスターズが揚輝荘でつくる演劇公演」を実施
演劇は好きな人だけが行くものになってしまい、観客人口がどんどん減っていますね。お客さんを作らないと、という気持ちでいっぱいです。ワークショップを行ったのもそのような焦りからで、今まで演劇を見たことがなかったとしても、ワークショップ目当てで来たお客さんが演劇を面白いと感じてくれたら、次も来てくれるかもしれない。だからこそクオリティを上げたいんですよ。初めての演劇体験こそ面白くしたいですね。
―――未来のお客さんにメッセージをお願いします。
志水 70年代、80年代、北村想さんたちが活躍し、小劇場ブームといわれた頃というのは、今週末はどの映画を見に行くか、どこの演劇を見に行くか、みたいなものだったんですよね。「ぴあ」のようなイベント情報を網羅した雑誌があって、それを見てみんな「今週は下北沢で何々を見よう。」みたいなことだったんですけど、今の演劇はそのような選択肢ではなく、やはり小劇場はお客さんが減ってしまっています。社会との接点が薄れちゃっていて、マイナーな存在になってしまって。このようなジャンルがあることを知ってほしいです。若い子たちもそうだし、子ども連れのお母さんたちも、古い世代の人たちも劇場に気軽にどんどん見に来てほしいです。
平塚 本当にそうです。そのような感じで通りがかってくれたらいいなと。今はまだ全然脚本が書けてなくて苦労しているんですけど。