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2024.11.7
【CLN活動レポート】かなやまじんくらぶ活動報告Vol.2
「かなやまじんくらぶ―まちを歩いて本を作ろう―」は、金山のまちをテーマにZINEを作る参加型アートプロジェクトです。2024年6月に活動が始まり、版画家、印刷家、建築家の3名のアーティストを中心に、公募メンバー12名も9月から参加しています。金山のまちに出かけ、地域の方にお話を聞き、さまざまな版画や印刷の方法で制作したZINEは、11月9日(土)に開催する「かなやまじんくらぶまつり」で発表します。
今回は「かなやまじんくらぶ」の出張ワークショップを中心にご紹介します。
【出張ワークショップ①ブラジルコーヒー】
日時:2024年10月18日(金) 場所:ブラジルコーヒー(名古屋市中区金山4-6-22コスモビル1F)
「音が版画になる!?レコードで版画を作ろう!」
名古屋市金山地区にある「ブラジルコーヒー」は、昭和時代から続く老舗喫茶店で、地域の人々にとって長年の憩いの場です。店内にはレトロなインテリアが施され、来店者にとって懐かしい昭和の雰囲気が感じられる空間が広がっています。「ブラジルコーヒー」は、単なる飲食店としてだけでなく、誰にでも開かれた場として名古屋の喫茶文化を支える存在です。店長の角田さんは喫茶店の運営に加え、自らもミュージシャンとして活動し、また店内では幅広いジャンルの音楽イベントが開催され、「ブラジルコーヒー」は地域の文化拠点として親しまれています。
このような金山駅前の老舗喫茶店「ブラジルコーヒー」にて出張ワークショップが10月18日(金)に開催されました。この日は「かなやまじんくらぶ」アーティストの嶋崎出さん(印刷家)と山口麻加さん(版画家)のサポートのもと、参加者が持ち寄った聞かなくなったレコードやアーティストや運営側が用意したレコードを使って、「メディウム剥がし刷り」による版画制作を体験しました。
昼下がりから多くのブラジルコーヒーの常連客や音楽好きの飛び入り参加者が集まり、レコードを使ったユニークな版画に興味津々で取り組みました。レコード盤を使った「メディウム剥がし刷り」とは、レコード盤の凹凸をインクで捉えて版画にする技法で、表面にインクを載せてから紙に転写することで、音楽の記憶が視覚的な作品として再現されます。制作した版画作品は、後日ZINEの素材としても使用される予定で、思い出のレコードが新たなアート作品に生まれ変わるとあって、多くの方が興味を持って参加してくださいました。
しかし、当日は湿度の影響か、メディウムがうまく剥がれず、転写に支障が出るハプニングも発生。版画家の山口さんの機転で、まずレコードに薄い油膜を塗布し表面を整えることで解決し、インクが鮮やかに映えるように改良されました。こうした専門家の手による対応もあって、参加者は版画制作を楽しみながら、それぞれのレコードに込められた音楽や思い出を視覚的に表現する新たな体験を味わいました。
【じんくらぶメンバー活動第3回】
日時:2024年10月19日(土) 場所:妙香園特設スタジオ
今回のテーマは「お気に入りの場所を図解する」で、建築家の河部圭佑さんのサポートを受けながら、メンバーは金山のまちを歩いて自分の「お気に入りの場所」を見つけ、その魅力を伝えるために図と言葉で表現しました。
まず、各自が選んだ場所の実測を行いました。距離の計測は、あらかじめ測った自分の歩幅と歩数を掛け合わせて算出します。高さの測定では、測りたい対象物の隣に立ち、他のメンバーに写真を撮ってもらいます。その後、身長と比較することで高さを割り出す方法を取りました。
実測データをもとに、立体的な図解に取りかかります。「アイソメトリック」という投影図法を用いて、対象を斜め上から俯瞰した視点で描写しました。アイソメトリック図は、奥行きや高さを直感的に感じさせる図法で、まちなみや建物の特徴をより詳細に伝えることができます。メンバーは自分の「お気に入りの場所」の特徴やそこに見つけた魅力を描き込みながら、個性あふれる図解を完成させました。
最後に、それぞれの場所に名前をつけ、場所の説明とお気に入りのポイントを文章で表現しました。街の風景や空間の意味が、メンバー一人ひとりの視点で新たに形作られていきました。完成した作品には、さまざまな視点で金山の魅力が表現されています。
午後からは「サイアノタイプでつくる『金山の植物図鑑』?」と題し、版画家の山口麻加さんのもと、青色が印象的な写真技法「サイアノタイプ」を使って、金山に自生する植物を記録しました。手本にしたのは、世界初の女性写真家と言われ、19世紀にサイアノタイプ技法を使って植物標本を青色の写真で記録したアンナ・アトキンスの植物記録集で、自然を独特な青い陰影で表現した作品です。メンバー活動では、金山のまちを散策しながら、都市環境に適応して変化する草木や、場所に根付いて長い年月を刻んできた大樹など、多種多様な植物と触れ合いました。その場にある植物に視線を向け、各参加者がそれぞれの観察をもとに印刷するための植物を採取しました。
妙香園の特設スタジオでは次のような手順でサイアノタイプによる印刷を行いました。まず、アクリル板の上に記録したい植物を配置し、全体の構図を整え、文字などを書き込み、露光機に乗せます。植物の上にあらかじめ感光液が塗布された紙を乗せ、植物の輪郭が浮かぶまで露光させます(天候がよければ日光でも可能です)。露光後は水洗いを行い、乾燥させて作品を完成させました。
青い陰影が浮かび上がるサイアノタイプ作品を通じて、金山というまちの新たな一面が垣間見えてきました。完成した植物図鑑には、現代の金山で出会った植物の魅力が青色の独特な陰影で記録されています。この図鑑を通じて、まちの自然と人々のつながりを改めて見つめ直す機会となりました。
【出張ワークショップ②金山にぎわいマルシェ】
日時:2024年10月27日(日) 場所:金山駅南口広場
「マップを手がかりにシンボルを探してZINEを作ろう!」をテーマに、金山駅南口で週末に開催されている「金山にぎわいマルシェ」に「かなやまじんくらぶ」が参加しました。この出張ワークショップは、金山商店街振興組合が主催するマルシェに集まる地域の方々に、金山の街を新たな視点で楽しんでいただける内容を目指して企画されたものです。
参加者は、マップに示されたヒントをもとに、「かなやまじんくらぶ」のメンバーが発見した「金山のまちに潜むシンボル」を探しながら街を散策します。シンボルを見つけることができたら、その場所にちなんだ形の版画が印刷されたページを受け取り、手作りで製本し、ZINEとしてお持ち帰りいただきました。ZINEづくりを通じて、金山のまちに息づく歴史や文化を楽しく体感していただける内容でした。
版画家の山口麻加さんが制作した版画作品は、街のシンボルが表すユニークな形が特徴です。ワークショップに参加した方は、その形と地図をヒントに逆にその場所を見つけ出すという、オリエンテーリングのような感覚で楽しみながら街を巡りました。シンボルとして紹介されたオブジェは、観光ではあまり訪れることのない金山駅の南エリアにある場所を中心に、沢上交差点に現存する路面電車の車輪、刀装具の「鍔(つば)」をモチーフにした岩の作品、お茶の妙香園本店、金山駅前のガス灯、さらにオブジェ「共生の使者」など、ユニークなランドマークが選ばれました。
このように、ワークショップでは小中学生からお年寄りまで多くの方が街歩きやシンボル探しを楽しみ、それぞれが発見したシンボルに触れながらZINEを制作しました。手作りのZINEには、金山の街に対する新たな発見と親しみが詰まっています。
また、金山にぎわいマルシェではアイドルのステージなど多彩な催しが行われる中、「かなやまじんくらぶ」もブースを通じて活動内容を紹介し、地域の方々とのつながりを深める良い機会となりました。
【かなやまじんくらぶまつり】
日時:2024年11月9日(土) 11:00-19:00 会場:金山南ビル美術館棟(旧ボストン美術館)3F
「かなやまじんくらぶ」で制作したZINEをお披露目し、金山をテーマにみんなで楽しむお祭り「かなやまじんくらぶまつり」を開催します。制作したZINEの展示、ワークショップ、トーク、ライブを実施します。イベント詳細は、こちら。