活動レポート
2025.5.8
【CLN活動レポート】「ポートフォリオ活用講座 キュレーター・プロデューサーの意思決定プロセス」実施レポート
クリエイティブ・リンク・ナゴヤは2022年度より継続して、若手アーティストのキャリアアップ支援のための助成支援を行っています。
2025年2月26日、クリエイティブ・リンク・ナゴヤの事務所にて、過去のキャリアアップ支援助成に採択されたアーティストを対象にした「ポートフォリオ活用講座」を開催しました。
2022年度から2024年度にかけての採択者15名が参加し、文化芸術の第一線で活躍するふたりの講師を迎え、キュレーター・プロデューサーとしての視点を学びました。
参加したのは、多様なジャンルのアーティストや制作者。講師はキュレーターの能勢陽子さんと、愛知県芸術劇場でプロデューサーを務める藤井明子さんです。
「キュレーターやプロデューサーがどのように情報収集を行い、企画を立案し、アーティストを選定し、公開・展示を行うか」、そのプロセスや重要視するポイントは、アーティスト側からキュレーター側の視点を理解するための大事な要素のひとつです。本講座ではアーティストたちがおふたりのお話を間近に聞き、自身のキャリアアップに必要な事柄について知識を深め、今後のアクションの手がかりを掴むことを狙いとしました。
前半では、お二人に具体的なお仕事についてお話を伺いました。「情報収集の方法」、「企画立案のプロセス」、「企画で重要視するポイント」の3点を軸にしながら、企画時に考慮する要素や参照する情報源など細かくお聞きしました。
普段お仕事されているジャンルが異なるおふたりですが、アンテナの張り方や考え方に共通しているところも多いことがわかりました。情報収集については、「特定のサイトを常にチェックしているわけではないが、なるべく多くの展示・公演を観に行くようにしている」とのこと。一方で、網羅しようと思うととても自分ひとりでは追い切れないので、同業者の口コミも大変参考にしているとのことでした。
また同業者の口コミは、企画準備段階で「その企画と相性の良いアーティスト」を探すときにも有用なことがあり、藤井さんも過去に同業者から教えてもらったアーティストをご自身の企画に起用したことがあるそうです。
一方で、企画の準備にあたっては、企画を組み立てていくプロセスの思考にジャンルの特性や各キュレーター・プロデューサーの個性(作家性)があらわれることもわかりました。能勢さんは、普段から持ち歩いているタブレット端末にご自身の「企画のネタ」や思考メモを書き溜めているそうです。ほかにも「企画準備にあたって、アーティストはどの段階で決めるのか」「若手アーティストを起用しやすい仕事とは」といった事務局側からの踏み込んだ質問にも真摯にお答えいただきました。
後半は、参加者からの自由な質問タイム。いまの自分の活動と本来やりたい活動との乖離や、キュレーターに連絡を取る際の気を付けた方がよいポイントなど、具体的な質問が多く投げかけられました。普段なかなか聞くことのできないキュレーター・プロデューサー視点のアドバイスを受けながら、活発な意見交換が行われました。
中には、クリエイティブ・リンク・ナゴヤの支援を受けて制作したポートフォリオや作品集を実際に活用していくための質問や悩み相談もありました。
「自分なりのこだわりがあってこのサイズにしたけれど、渡される方は迷惑じゃないのか」といった質問や、「(音源を制作したものの)実際に見た方が一番伝わるとよく言われる」といった悩みなど、何かしらアクションを起こしたからこその質問が多かったのが印象的でした。なお、前述の「ポートフォリオのサイズ」については「渡される方はそれだけでありがたい資料なので、ご自身の世界観を追及される方が良い」とのことです(受け取り側も様々なので一概には言い切れないところがあります)。
参加者の声の一つをご紹介します。
「行ってよかったです。分野をまたいで活動している自分にとって、異なる分野でアーティストを選ぶ立場にあるお二人から同時にアドバイスを受けられた時間は、大変ありがたく貴重なものでした。」
「大変貴重な講座を開講していただきありがとうございます。講師の方と直接お話しさせていただくことができ、大変嬉しく思います。このような場を設けていただき、誠にありがとうございました。」
ポートフォリオは、アーティストが自身の活動を伝える重要なツール。本講座が、参加者の皆さんにとって今後のキャリアに役立つヒントとなれば幸いです。