アトリコナゴヤ⑤「名古屋は、新しいものに対する先入観がなく、好奇心で受け入れる、現代美術に適した地域」 – キュレーター 能勢陽子さん | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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2025.10.8

アトリコナゴヤ⑤「名古屋は、新しいものに対する先入観がなく、好奇心で受け入れる、現代美術に適した地域」 – キュレーター 能勢陽子さん

クリエイティブ・リンク・ナゴヤがこの度スタートする特集記事「アート・リコメンド・ナゴヤ(アトリコナゴヤ)」は、名古屋をもっと楽しむための文化芸術ガイドです。芸術の秋、「国際芸術祭あいち2025」も開催される本年は、名古屋でもさまざまなアートイベントがめじろおし!その中で何を観に行こうか迷っているあなたに、その道のプロフェッショナルの方々が、美術・音楽・舞台などから推しのイベントをリコメンドします。

 

第5回は、東京オペラシティアートギャラリーのシニアキュレーターの能勢陽子さんです。

 

 

能勢陽子さん プロフィール

岡山県生まれ。1997年から2024年3月まで豊田市美術館学芸員を務め、「Blooming:ブラジル―日本 きみのいるところ」(2008年)、「石上純也―建築のあたらしい大きさ」(2010年)、「反重力展」(2013年)、「ビルディング・ロマンス」(2018年)、「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」(2021-2022年)、「ねこのほそ道」(2023年)、「未完の始まり:未来のヴンダーカンマー」(2024年)などを担当。2009年にバンコク芸術文化センターで開催された「ツイスト・アンド・シャウト:日本の現代美術」でゲストキュレーターを、2019年のあいちトリエンナーレ2019ではキュレーターを務めた。2025年4月から東京オペラシティアートギャラリーのシニアキュレーター。

 


 

私のリコメンド 1

アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦

会場|豊田市美術館

日程|10月4日(土)〜11月30日(日) ※月曜休館(10月13日、11月3日、24日は開館)

Webサイト|豊田市美術館 アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦

1950年代から60年代にかけて、前衛美術の領域で活動した女性美術家たちの作品を集めた展覧会。男性中心の美術批評の中で見過ごされてきたが、90年代に再評価された草間彌生や田中敦子に加え、山崎つる子や多田美波をはじめとする14名の作品が紹介されます。

長年勤めた豊田市美術館は、草間や田中の作品をコレクションしていますが、同時代に活動した他の女性作家たちの作品を観る機会は全国的にもそう多くありません。この展覧会で、そうした女性作家たちの作品とその背景にあった批評について知っていただければと思います。

 

山崎つる子《作品》1963 年 兵庫県立美術館蔵(山村コレクション) © Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa,Tokyo

豊田市美術館

 


 

私のリコメンド 2

アートサイト名古屋城 2025

会場|名古屋城 御深井丸

日程|10月11日(土)~10月19日(日)

WEBサイト|アートサイト名古屋城

2023年から毎年開催されている、名古屋城を舞台にアートを展開するプロジェクト。昨年は複数の作家が名古屋城の動植物をモチーフにした作品を発表し、観光地としてだけでない、独自の生態系が浮かび上がってきました。

今年は城の「建築構造(テクトニクス)」に注目し、アーティストの川田知志さんがフレスコ画を移し替える際に用いる技法を使って、独自の解釈で本丸御殿を写し取る大規模な作品を展示します。このプロジェクトを通して、よく知っているはずの名古屋城が、その都度新しい顔を見せてくれます。

 

川田知志の制作風景
撮影:福永一夫
提供:東京都現代美術館
(c)Satoshi Kawata

 

 

 


 

私のリコメンド 3

港まちブロックパーティー meets みなと土曜市

会場|築地口駅前、江川線沿い歩道エリアほか

日程|11月8日(土)

Webサイト|港まちブロックパーティー meets みなと土曜市

港区・築地口周辺エリアに地元住民やアーティストが集まり、盆踊りやDJ、バンドのライブやパフォーマンス、作品展示が繰り広げられる街のお祭り。街のお祭りといっても誰もが参加できる企画がたくさん盛り込まれており、私も毎年行っています。

ミュージシャンのテライショウタさんがつくった曲を地域のみなさんが合唱したり、アーティストの宮田明日鹿さんと地元の方がともに編み物をする場をつくる「港まち手芸部」のブースがあったりと、地域の温かみと、他の地域から来た人も楽しめる居心地のよさが同居した、稀有な場になっています。

 

撮影:三浦知也 写真提供:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会

 


 

私のリコメンド 4

ネザーランド‧ダンス‧シアター (NDT 2)来日公演2025

会場|愛知県芸術劇場 大ホール

日程|11月24日(月・祝)

WEBサイト|ネザーランド‧ダンス‧シアター (NDT 2)来日公演2025(愛知県芸術劇場)

名古屋は唐津絵理さんが愛知県芸術劇場の芸術監督を務められていることもあり、優れたダンスカンパニーの公演を遠方まで出掛けることなく観ることができる、恵まれた地域です。

この秋に公演を行うネザーランド・ダンス・シアターは、圧倒的な表現力と身体能力の高さで世界的に高い評価を受けているオランダのカンパニーです。ダンスの魅力が直接肌に伝わってくるような舞台になるはずです。

FOLKÅ 2024 ©Rahi Rezvani

 

 


 

私のリコメンド 5

国際芸術祭「あいち2025」パフォーミングアーツ
オル太『Eternal Labor』

会場|愛知県芸術劇場 小ホール

日程|10月10日(金)~10月19日(日)  ※10月14日(火)休演

Webサイト|国際芸術祭「あいち2025」パフォーミングアーツ オル太『Eternal Labor』

オル太は現代美術とパフォーミングアーツの領域に跨る活動を展開するアーティスト・コレクティブ。社会の中で弱い立場にある人たちや、歴史の中で周縁化された存在を、フィールドワークを通じて掘り下げます。

今回は「女性」や「労働」をキーワードに、日本と韓国の炭鉱でのリサーチを重ねてつくられた演劇作品で、公演前には、舞台美術も公開されます。シリアスなテーマの中にもどこか飄々としてユーモラスな雰囲気も醸し出す、オル太ならではの舞台になるはずです。

©OLTA

 


 

ナゴヤにコメント

名古屋は、新しいものに対する先入観がなく、好奇心で受け入れる、現代美術に適した地域だと思います。「港まちブロックパーティー」のように、地域の人たちが参加しながら外部にも開かれ、そこで新たな交流が生まれる。そうした活動が続いているのが素晴らしいことだと思います。そうした名古屋独自の磁場に魅せられて、他地域から訪れる人も多いです。こうした活動が、もっと内にも外にも知られていけば、さらに充実した活動が展開できるようになり、日本のなかでも地域に根差した現代美術を観ることができる、稀有な場になるのではないかと思います。

 


*イベントの予約状況は各主催者のページにてご確認ください。