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2023.3.22
採択事業紹介② タキナオ「umino-ito ~かつての海辺でうまれる縁の糸」
クリエイティブ・リンク・ナゴヤの2022年度助成事業において、「社会連携」をテーマに採択された事業を4回にわたってご紹介します。主催者の皆さんの、各分野との「つながり」についてインタビューしました。
第2回は「umino-ito ~かつての海辺でうまれる縁の糸」を行うタキナオさん(企画者・絵画/ドローイ ング/映像パフォーマンス)と青山知弘さん(かんでらmonzen亭)にお話を伺いました。
【イベント概要】
事業名:umino-ito ~かつての海辺でうまれる縁の糸
実施者名:タキナオ
会場:笠寺観音境内会館前
内容:「笠寺観音」として親しまれている笠覆寺の境内を会場に、美術作品としてのインスタレーション を設置し、その中で生命の誕生をテーマとしたパフォーマンス公演「海を孕みくる」とワークショップを 開催します。参加者がワークショップで制作した手作り楽器はかんでら monzen 亭協力のまちあるきイベ ント「まつこ島チンドンやさん」や翌日開催される「umino-ito まちあるきツアー」でも使用され ます。地域の人々がアートに親しむ機会を創出するプロジェクトです。
【インタビュー】
タキナオさん(企画者・絵画/ドローイング/映像パフォーマンス)、青山知弘さん(かんでらmonzen亭)
イベントの会場となる名古屋市南区の笠寺観音 (笠覆寺)の新会館前で、タキナオさん(右)と青山知弘さん
――「umino-ito ~かつての海辺でうまれる縁の糸」はどんな企画ですか?
タキナオ 大きく3つの構成になっています。まず3月13日から17日の間に、新会館前の広場で大工のcarpentryさんに幅・奥行き4.5m、高さ2.3mの木製のドーム型のオブジェを建ててもらいます。オブジェには幕を張り、映像を投影するスクリーンにもなる予定です。
次に18日に完成したオブジェの前で音楽家の広沢純子さんと一緒に、日用品などの身近な素材を使った「手作り楽器のワークショップ」を開催します。
そして最終日の19日にはオブジェとその前のスペースを使い、カジヤマテルヨさん、粕谷星来さん、宮崎絢愛さんの3名によるダンスと、marucoporoporoさんの音楽、タキナオのライトドロー(映像)による、「パフォーマンス公演」を行います。
――かんでらmonzen亭さんはどのような形で協力されているのですか?
青山 私たちは以前より商店街振興の取り組みの一つとして、アートとのコラボレーションを行ってきました。今回は、3月18日のワークショップでつくった楽器を使って昔のちんどんやさんのように商店街を練り歩いたり、楽器を使った演奏会を開いたりして、19日にはパフォーマンス公演の前に、会場の周辺を案内しながら笠寺の歴史などを紹介する街あるきツアーで協力します。
初めて訪れたときに既視感を覚える人も多いという、下町情緒のある笠寺の商店街
――3月19日の「音と映像とダンスのパフォーマンス」とはどういったものですか?
タキナオ 公演名は「海を孕(はら)みくる」といいます。私自身、以前より“つながり”をテーマにした作品を多くつくってきました。言葉で説明するのは苦手なんですが(笑)、今、ここにいる私たちも、さまざまなつながりを経て存在しています。生命のつながりは母親の胎内にいたときから始まっていて、羊水は海にもつながります。こういった“つながり”からインスピレーションを得て、ダンサー・ミュージシャン・映像とそれぞれが作品をつくり、コラボレーションで表現を行います。
――その表現の場所になぜ笠寺を選ばれたのですか?
タキナオ 笠寺商店街や笠寺観音とは、2010年のシャッターペイントの企画でご縁をいただきました。それまで私は個人での活動しかしたことがなかったのですが、そのときに初めて他のアーティストとコラボレーションする機会があり、その楽しさを知りました。またそれがきっかけで笠寺にもご縁をいただき、2021年のかさでら観音亀池アートにも参加しています。
実はこの「海を孕みくる」は2022年11月に屋内の会場で初演を行っています。そのときにコラボレーションしたアーティストたちと「機会があればまたやりたい」「次は屋外ではどうだろう?」と話をしていて、このアイデアを思いついたときに、すぐに「縁結びでも有名な笠寺観音の境内」がイメージとして浮かびました。それですぐに青山さんに相談し、笠寺観音さんからも快諾していただけました。
――笠寺にはどんな歴史があるのですか?
青山 笠寺はかつて海に囲まれた高低差のある台地で、松の茂る「松巨島(まつこしま)」と呼ばれていました。その後、平安時代(西暦900年前後)、雨風にさらされている観音を見て、自分の笠を被せた優しい娘を藤原兼平が見初め、妻として迎えるという「縁結びの玉照姫の伝説」があります。シャッターペイントから始まったタキナオさんとの交流も、そんなご縁だと感じています。
タキナオさんも参加した2010年のシャッターペイント企画で描かれた「玉照姫の伝説」の壁画
――どんなイベントになりそうですか?
タキナオ ちょうど先日もcarpentryさんとオブジェの打ち合わせを行い、私も展示や投影をする作品の制作に入っています。ワークショップを行う広沢純子さんも楽しみにしてくれています。「海を孕みくる」については、それぞれのアーティストがよりテーマを深く掘り下げた作品づくりを進めています。さらに今回は新たな試みとして春日井市のCOFFEE POLITEさんにもインスピレーションを受けたコーヒーを提供していただくことになりました。これだけ大きなイベントを企画したのは初めてなので、ワクワクしています。
「海を孕みくる」のパフォーマンスイメージ
――どんな方に来てほしいですか?
タキナオ 普段からアートに興味がある方はもちろん、せっかくオープンスペースで開催しますので、「これまでアートには縁がなかった」という方たちにも、ぜひ足を止めていただければと思います。そして、そこからどんなことを感じたのか、ぜひ私たちに教えてください。
青山 街づくりは人とのつながりで新しい展開が生まれます。一人でも多くの方がこれをきっかけに笠寺に来て、興味を持っていただけると嬉しいですね。10年前の企画がきっかけで今につながっているように、ここからまた新しいご縁が生まれることを願っています。