アトリコナゴヤ
パイロット事業
インタビュー
2026.3.4
アトリコナゴヤ⑩「名古屋の劇場で、自分の心に刺さる表現、アーティストを探してみてください」 – 編集者・ライター 小島祐未子さん
昨秋からスタートした「アート・リコメンド・ナゴヤ(アトリコナゴヤ)」は、名古屋をもっと楽しむための文化芸術ガイドです。その道のプロフェッショナルの方々が、当地で開催される様々な公演・展示会などから推しのイベントを、みどころとともにリコメンドします。
今回は、編集者・ライターの小島祐未子さんです。
小島祐未子 プロフィール
岐阜県出身。大学時代、第1回NAGOYA演劇遊戯祭をきっかけに演劇鑑賞を始める。情報誌「ぴあ中部版」の演劇担当を経て、2014年からはフリーランスの編集者・ライターとして活動。新聞や雑誌、WEBサイトに執筆のほか、劇場の広報誌や報告書の制作も手掛ける。書籍『実録 火田詮子~アングラの交差点に立ち続けた役者』、平野勇治遺稿集『小さな映画館から』を編集。美術家・音楽家の上野茂都の著書『個展物語』にも携わる。お手伝いをした上野茂都最新書籍『厨房狂歌一千首』が2026年4月刊行予定。虹の会演劇大賞審査員。
※各プロジェクトの詳細については、各主催者のページでご確認ください。
私のリコメンド 1
人形劇、演劇、オブジェクトパフォーマンスなどを数多く創作。木村繁さんは2023年に他界されるまで東海地方の舞台芸術を様々に支えてきました。そんな木村さんを偲ぶ「まつり」が行われます。初日は木村さんの戯曲2作を、2日目は木村さんが指導した表現集団OPT(オブジェクトパフォーマンスシアター)の作品を、ゆかりの深い後進のみなさんが上演。上のほうでニコニコ眺めている木村さんの姿が目に浮かびます。3日目は『小町曼荼羅』、4日目はもくもく座『甚目寺説教源氏節』と、木村演出の真骨頂に触れられる絶好の機会。なお、トークイベントも2日間あり。年齢や立場に関係なく誰にでもフラットに接した木村さんの思い出話は尽きないでしょう。
私のリコメンド 2
メニコン シアターAoi 劇作家プログラム リーディング上演
会場|メニコン シアターAoi (東区)
日程|2026年3月22日(日)
Webサイト|メニコン シアターAoi
主催|公益財団法人メニコン芸術文化記念財団
メニコン シアターAoiは東海地方の有望な若手3人を招聘し、田辺剛さん指導のもと約1年かけて戯曲を書き下ろす「劇作家プログラム」を展開。その最終発表会としてリーディング上演を行います。劇団サカナデの岡本拓也さんは男女や家族、コミュニティに生じるヒリヒリした人間関係を描く名手。廃墟文藝部の斜田章大さんは世界や歴史を、時に深刻に時に大らかに見つめる不思議な振り幅を持った作家です。劇団さよならの長谷川彩さんは独特の言語感覚による繊細な会話劇で印象的ですが、多彩な文体・作風で書けるのも強み。この3人の作品をシアターAoi芸術監督の山口茜さんが演出します。入退場自由なので演劇三昧の一日を体験してみてください。
私のリコメンド 3
下剋上宣言(仮)/シン・沈殿タイ
会場|昭和文化小劇場(昭和区)
日程|2026年4月2日(木)~5日(日)
Webサイト|ILL TOKAI UNDERGROUND
主催|ILL TOKAI UNDERGROUND
八代将弥さんが主宰するILL TOKAI UNDERGROUNDは劇団などの枠を越えて優れた作品を発信するユニット。彼らが新たなステージに挑みます。まず東京のシライケイタさん、山崎薫さんをキャストに迎えて新作を発表。さらに代表作を再創作し、同時上演します。嬉しいのは『シン・沈殿タイ』で吉田光佑さんが復帰すること。八代さんと吉田さんはかつて「SABO」名義で共作していて、私は10年以上前に彼らの劇団を見て衝撃を受けました。繊細な吉田演出の復活は本当に楽しみです。それにしても八代さんの実行力にはいつも感嘆します。日本演出家協会理事長のシライさんを口説いたことろから企画成立まで尋常じゃない根気や勇気が要ったはず。今いちばん熱い演劇人、八代さんの最新動向は見逃せません。
私のリコメンド 4
劇場ワンダーランド Null新作公演『WITH LiMBO』
会場|愛知県芸術劇場 小ホール(東区)
日程|2026年5月2日(土)、3日(日・祝)
Webサイト|愛知県芸術劇場
主催|愛知県芸術劇場(公益財団法人愛知県文化振興事業団)
2025年から愛知県芸術劇場ダンスアーティストに就任したNull(ヌル)は岡田玲奈さん、黒田勇さんのダンスデュオです。岡田さんは幼少期にモダンダンスを始めた一方、黒田さんはサッカー少年時代を経て高校でダンスを開始。ふたりは至学館大学卒業を機にNullを結成しました。彼らは異なるキャリアを踏まえ、まっさらなところからダンスを追究。身体の自然な反応を重視した表現を模索しています。「不確実」「不安定」といった意味の『LiMBO』は複雑な現代社会に向き合い、自分が今どこに立っているのかを問う新作。立方体のオブジェとともに展開されるステージは様々な「見立て」ができるので、ご自身の現在地とも照らし合わせながら世界に想いをはせてほしいです。
©Joseph Marcinsky
私のリコメンド 5
岸田戯曲賞作家の佃典彦さんが師匠と仰ぐ竹内銃一郎さんの1987年発表作『東京物語』を上演するためにチームラヴガンを立ち上げました。同作はタイトルからわかるとおり小津安二郎監督の同名映画が題材。そこにミュージカルでも知られるマヌエル・プイグの小説『蜘蛛女のキス』の要素も加わり、同性愛者の男オリーブと革命家ブレーキの会話が繰り広げられるという、引用上手の竹内さんらしい二人芝居です。佃さんはもちろん演出を手がけ、オリーブ役に八代将弥さん、ブレーキ役には憲俊さんが配されました。名古屋をけん引する俳優ふたりが佃演出のもと、がっぷりと四つに組むのは見モノ。なお、佃さん自身の作品を味わえる短編の特別上演もあります。
ナゴヤにコメント
名古屋はよく京都と並べて語られることがあり、どちらも長い歴史のある街ゆえに「伝統」と「革新」が共存することで繁栄してきたと言われます。舞台芸術の世界も同様です。京都でも名古屋でも、突然変異とも言うべき新しい劇作家、演出家、集団が彗星の如く出現。全国に熱狂的なファンを生み出しました。それは商業的な成功とは少し違うかもしれませんが、観客の脳裏に焼きつく体験という意味で芸術史に残る偉業だったと思います。名古屋を拠点に表現活動を継続していくことは社会的・経済的に簡単ではありませんが、この街に暮らしながら創作を行っている人はたくさんいます。彼らの中には見たこともない優れた表現をする人がいるかもしれません。東京に行かなくても、パリやロンドン、ニューヨークに行かなくても、未知のアーティストに出会える可能性はあります。どうか名古屋の劇場で、自分の心に刺さる表現、アーティストを探してみてください。







