【パイロット事業レポート】シリーズ勉強会 第3回「アートと企業・ビジネスの接点」 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

活動レポート

2023.4.26

【パイロット事業レポート】シリーズ勉強会 第3回「アートと企業・ビジネスの接点」

シリーズ勉強会「名古屋の文化芸術を考える」 

第3回「アートと企業・ビジネスの接点~アートの力を地域に活かす」

日時:2023年3月23日(木) 18時30分~20時
場所:愛知芸術文化センター アートスペースA室
主催:名古屋市、クリエイティブ・リンク・ナゴヤ
共催:中日新聞社

 

プログラム 
【1】パネルディスカッション 

樋口 哲也 リンナイ株式会社 経営企画本部広報部長/クリエイティブ・リンク・ナゴヤ理事 

杉崎 栄介 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 ACY 協働推進グループ チームリーダー 

南 宏樹  福岡市経済観光文化局文化振興部主査(アートのまちづくり推進担当) 

 

【2】クロストーク   

モデレーター 古橋敬一(愛知学泉短期大学講師/クリエイティブ・リンク・ナゴヤ理事) 

 

【1】パネルディスカッション

樋口 哲也 リンナイ株式会社 経営企画本部広報部長/クリエイティブ・リンク・ナゴヤ理事

「リンナイ株式会社の地域貢献とアート」

 

リンナイの本社は名古屋市中川区にあります。我々は中川運河助成ARToC10に10年間、毎年1000万円ずつ1億円を寄付しています。ARToC10は中川運河の再生事業として名古屋市が企画されて、「にぎわいゾーン」のために、アートを一つのキーにして活性化をしていくという企画です。ではリンナイと中川運河がどういう関係にあるのかというと、リンナイは1920年の創業ですが、中川運河が1926年に着工されたため、私たちは創業の地から立ち退きを余儀なくされ、現在の場所に移転しました。つまりリンナイは中川運河の発展とともに発展をしてきたという歴史があります。

 

ではなぜリンナイがアートなのかというところですが、「モノづくりの原点ともいえる、豊かな発想力と手づくりをベースとした革新的な創作力が大切であり、これは人の感性にうったえる芸術活動と相通じる」という考えからきています。そして「モノづくりに必要な創造力の芽を育み、ひいては地域交流の活性化や産業育成に貢献できる」とも考えていて、こういう支援をしています。アートで刺激をされて、モノづくりの発想の原点になるとか、そこに近づいていく人が1人でもできてくれれば、すごくいいのでないか。さらにそれがこの地域の活性化を担って、プライドにもなっていけばいいなという思いを持って、こういった取り組みを応援しています。

 

私の本業は広報です。広報部がやっている地域貢献活動、協賛の考え方というのをまとめています。まず1つに「プロセスや成果が地域に還元される事業や活動であること」。地域に還元されなければ意味がないと思っています。2つ目に「モノづくりに必要な創造力の芽を育む事象や活動であること」。3つ目が「地域交流の活性化や産業育成に貢献する事業や活動であること」。この3つが大きな柱となっています。その上で「一定程度のブランド認知の拡大に寄与する事業や活動であること」。これも大事にしています。

 

いろいろお申し出があるのですが、全てに協賛できるわけではありません。地域に還元される、学生さんに還元される、どこかの地域にお住まいの方々に還元されるといったことを中心に協賛をしています。代表的な例では「大名古屋電脳博覧会」に協賛をしています。これは隔年で行っていて、2015年からずっと続けています。愛知県内の芸術系大学5大学のメディアアートに関わる卒業生や学生、若手作家に発表や情報交換の場を提供するというのが趣旨です。学生に還元する場を与えることを主題において、協賛をしています。リンナイの協賛の寄付の考え方を、少しでもご理解いただければと思います。

 

参考URL:

株式会社リンナイ「地域・社会とのコミュニケーション」https://www.rinnai.co.jp/csr/social_contribution/

中川運河助成 ARToC10 https://www.nup.or.jp/nui/human/nakagawa/

 

杉崎 栄介 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 ACY 協働推進グループ チームリーダー

「創造の担い手をネットワークする手法と成果」

 

本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。私の仕事は「地域アーツカウンシル」と呼ばれているものです。クリエティブ・リンク・ナゴヤもその1つだと思います。芸術文化の支援や活動に行政が関わるようになったのはつい最近のことで、歴史的にみれば企業や個人によって行われておりました。今は公民連携が当たり前の時代になっていて、それをやらないと前に進めないし、立ち行かない時代です。私のような文化行政とか文化政策に関わる者というのは、それをまず自覚しておかなければならないと思っています。

 

アートと企業とビジネスの接点という主題に対して、創造の担い手をネットワークする手法と成果でお話ししていきます。まず前提として、アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)は横浜市芸術文化振興財団の事業の1つとして、横浜市と一緒にやっていて、ベースは「芸術文化による街づくり」にあります。街づくりの話から経済の話につなげていく、という話です。街づくりでは最初に「場」があって、そして「時間軸」があり、この2つを考えると芸術文化のことも必然的に地域の歴史や同時代性をふまえて議論することになります。それで、ACYのキャッチコピーは「芸術と社会をつなぐ、横浜だから、今だから」です。横浜は東京からほどよい距離にある街の利点を活かしながら、東京と同じことをやらずに独自性を出すのが、横浜市で働く人たちのメンタリティになっています。

芸術文化も、街づくりも人が大事なので、「創造の担い手」に集まってもらうためのプロジェクトを実施しています。開放性、相互性、接続性を高めるような実験、それを評価してモデル化を促進するプログラムをつくっています。さらに大事なのは「横浜がいい」と思って集まってきた方々にシビックプライドを持っていただくこと。それを核としいろんな価値観の方が集まってほしいと思っています。ACYはこうして集まった創造の担い手たちとつながり、助成や企画をしています。名古屋の場合はでクリエイティブ・リンク・ナゴヤに助成を採択されたものを見ても、すでに十分な質や量があると見ています。担い手が相当数いるのは、やはりこれまでのリンナイさんのような企業・町方が取り組んできたこと、芸術系大学の層の厚さや愛知県の芸術祭の成果だと思います。

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤがこれから中間支援をやっていくということで、今日は実務的な話をさせていただきます。中間支援の手法は、どうやってネットワークをつくっていくかということです。我々は「日課的な仕事」と「イベント的な仕事」を両輪としています。相談窓口や助成はストックされる情報です。それを受けていくことで、「創造の担い手のニーズ」に気づけます。ただ、芸術文化財団としてつながりやすい芸術やデザインを生業とされる方は自然と来てくれますが、企業や行政など芸術文化を本業としない方はなかなか来ない。そこで地元経済界のキーマンや企業のネットワークを持つ人を立てて、自分たちにはないネットワークをつくっています。

 

我々はこうしてアート側と地域側の中間に立って自分たちがつながることで双方の関係性を構築していきます。そこで大切なのは、必ず「ハンズオン」でやること。自ら新しいことに取り組むときも、他人任せにしてしまうと何も残らないので、専門家を招いてもノウハウが残るように自分たちも一緒に取り組みます。また、ACYというのは開発志向です。小さく始めることを大切にしています。そしてそれを検証する機会を設けます。その繰り返しをしていくということで実験的なプロジェクトをモデル化していきます。

 

具体的な立ち上げ例をお話しします。「ミナトノアート」という企画を2年前に立ち上げました。これは横浜駅から元町までの海側の都市部をアートでつなぐイベントです。地域でアートを生業とする方と実行委員会を立ち上げて実施しています。その初期段階を3年間限定で、「我々と一緒にやっていきませんか」と誘いました。あと1年で我々は抜けてしまいますが、「まずはやってみましょう」とチャレンジしているところです。

 

立ち上げ期はコロナ禍があったので、まずは市内の人をターゲットにしましょうと話をして、この時点では観光の視点というより、「アートをもっと身近に」とか「もっと楽しく」という目標を持ちました。

プログラムを考えたときには「横浜の街を楽しむを入り口にしたいけど、最終的には若手芸術家の応援を楽しむ人に変換させていきたい」というのがありました。そこで、横浜市内にはさまざまな文化と芸術の接点があるんですが、それらは敷居が髙いので、人が往来する駅や広場でアートの入口をつくっていこうと狙いました。そして、身近な場所にあるショップやカフェなどにも参加してもらい、駅や商業店舗などをきっかけにギャラリーにも行ってもらい、アート好きな人がどんどん増えていくという仮説です。

キャンペーン型プロジェクトを地元の人と一緒にやることで、地元の人がやりたいことを形にしたいと考えました。ギャラリーの立地などをまちづくりの視点で分析して、将来的な可能性を図で示していきました。こういうフレームワークから企画を立てると、イベントの評価もはっきりします。街づくりを軸に評価を置くと企業さんも興味を持ちますし、イベント単体の来場者数の評価のみに行かなくて済むこともあります。

最初に話したように、「場」と「時間」で考えていくと、必然的に人のライフスタイルやライフサイクルを考えることになります。都市とか人とかビジネスのさまざまな部分に文化芸術の価値、社会的価値が見えてくるのではないでしょうか。

 

ACYが担ってきたことは、多様性・実験性が交わる都市の内発性をどう高めていくのかです。自発性とは損得勘定からする行動であり、内発性とは内側から発生する行動です。人間性の回復と都市性の回復を目指して文化芸術を地域の身近な場所でやっていくようにしています。そうすると人の人生にも関わらざるをえなくなりますが、人の人生に関わろうとした場合に、それは音楽や美術、ダンスといった芸術作品を身近にといっただけではできないので、文化多様性を見つめ直すことになります。そうすると文化芸術を通じて地域のレジリエンス(弾力性度)を高めていけるのではないかと考えます。ACYとしてこれまで大事にしてきた精神は、「リーダーシップ」。内発的な行動を見ることです。それから「パートナーシップ」です。協働することで見えてくることもあります。こういうことをやってきた15年でした。

 

参考URL:

アーツコミッション・ヨコハマ https://acy.yafjp.org/

 

南 宏樹 福岡市経済観光文化局文化振興部主査(アートのまちづくり推進担当)

「アートのまちへのチャレンジー「Fukuoka Art Next」」

 

 

福岡ではアートへの取り組みを「Fukuoka Art Next」プロジェクトということで事業化しています。「Fukuoka Art Next」のロゴの「FaN」には、アートファンをつくっていくという意味もあり、このロゴを来年度には、「福岡のどこでも目にするな」と言っていただけるように頑張っていきたいと思っています。

 

福岡市ではここ10年間において、福岡で起業する方々を支援するスタートアップ支援制度を進めています。福岡には美術大学がなく、なかなかアーティストが職業として活躍していくような土壌が育っておらず、関西圏、関東圏に人材が流出しているような状況があります。そこで、そういう土壌を育んでいこうとした際に、この10年間取組んできたスタートアップ支援の制度のノウハウが親和性も高く、活用できるのではないかと考えたものです。この「Fukuoka Art Next」では、「アートスタートアップ」においてアーティストの育成・成長支援を行っていくことは勿論、「アートのある暮らし」の推進として、コロナ禍で閉塞感を感じている市民がアートの力で少しでも元気になっていただけるように、ウェルビーングに繋がる取組みを実施するという、この二本柱で事業展開をしていくこととしています。このプロジェクトはまだ1年ですが、皆さんに簡単にご紹介いたします。

 

まずはしっかり街の中にこのアートを浸透させていくことが必要だろうと、FaN事業に賛同いただき自主的にアートに関する取組みを実施していただく民間企業等と連携して、「FaNロゴ」の掲出やギャラリー情報、イベント情報などを積極的に発信するようにしています。また、アーティストと企業をマッチングさせる事業を通して、企業の社員食堂に福岡出身のアーティストの絵を飾ってもらったり、ファッション企業がアーティストとコラボして地域限定の商品をつくったりする動きも出てきています。こういった取り組みが少しずつ広がっていくことで、街中でアートに触れるタッチポイントを多く作ることができていくものと思っています。

 

福岡はアジアのゲートウエイでもあり、韓国や中国の方も多く来られます。そのため観光集客の土壌はある程度備わっており、観光の力と連携をしたアートイベントを行うことで、福岡市民の方々にも福岡市がアートに力を入れて取り組んでいることが伝わるのではないかと考え、2022年の9~10月に街中をアートで彩る「FaN Week」を開催しました。ま具体的には平面から立体、インスタレーションまで、市内21会場に130~140のアート作品を展示。福岡市には福岡市美術館とアジア美術館という2つの施設がありますが、なかなかそれらが認知されていないこともあり、この「FaN Week」ではしっかりとプロモーションしたいとも考えました。

福岡市美術館では著名なアートコレクターの方々にコレクションを貸与してもらい、これまでの美術館にはない展示ができ、普段とは違う客層も見られ、短い期間ではありましたが多くの来場者がありました。さらに福岡には寺社仏閣や国指定の史跡などの観光コンテンツが多くありますので、それらと連携して観光とアートを結びつける企画も行いました。寺社仏閣で屋外アート展示×ライトアップをしたところ、普段とは異なる非日常空間が味わえるということで、やはり多くの方にお越しいただきました。「FaN Week」の来場者は全18日間で延べ6万5000人。それ以外でも会場の周辺部にでは前年度の同時期と比較して大きな人の動きがあったということも、マーケティングの結果として出ています。

 

また、FaN Week期間において、これまで民間事業者が主体的に開催してきた「アートフェアアジア福岡」という見本市を初めて民間事業者と福岡市とで共催しました。このときには「行政から風穴を開けていこう」と、全国的にも課題になっている保税展示場制度を活用して、海外ギャラリーの誘致と作品の展示・販売を実施し、この保税展示場制度を活用したフェアは九州で初めての試みということで積極的な情報発信も行いました。

 

「Fukuoka Wall Art Project」という取組みも行っています。福岡市の都心部では老朽化する建物が建て替え時期に来ています。そこで工事現場の白壁を活用して、福岡出身の、福岡を拠点に活躍するアーティストの作品を掲げることで、市民の方に「福岡にもこんなに素晴らしいアーティストがいるんだ」と認知してもらうきっかけにしています。

 

「福岡アートアワード」も新設しました。福岡市美術館が福岡で活躍した人たちを表彰しつつ、その作品を買い取って展示します。こちらは来週以降で、選考結果がプレス発表できるのではないかという段階に来ています。

 

「Artist Cafe Fukuoka」は学校の旧校舎をリノベーションして、アーティストの交流・活動の拠点として整備したものです。ここには相談ブースの他、作業スペースや展示スペースも併設されていて、一般の方が作業スペースを見られたり、アーティストと交流したりできる機会も設けており、今後もアーティスト、市民に開かれた場所として運営していくこととしています。こちらも先ほどの横浜市と同じようにアーカイブ化やデータ化をして、企業とのマッチングやアーティストの就職先につながっていくような取り組みを実施していくこととしています。

 

参考URL:

Fukuoka Art Next https://fukuoka-art-next.jp/

 

<クロストーク>

モデレーター 古橋敬一(愛知学泉短期大学講師/クリエイティブ・リンク・ナゴヤ理事)

 

古橋 今日はせっかくですので、来場者の皆さんがどんなことを感じたのかも聞いてみたいと思います。まずはお1人で、この3人のお話を聞いて感じたことを思い浮かべてください。

~では次に思い浮かべたことを、近くの人と話し合ってみてください。

~それでは会場の皆さんに聞いてみたいと思います。

 

参加者A 福岡市のアートフェアの話が気になりました。官民共同でアートフェアをやっているというのが、あまり聞いたことがなかったので関心を持ちました。特に保税制度については、具体的にどのようなことをされたのですか?

 

 実は保税制度の活用についてはすごく苦労しました。まずは民間企業との意思統一、保税を使うメリット、デメリット、労力などを考慮しながら、一つひとつ話し合いました。九州で保税展示制度を使ったアートフェアというのは、これが初めてだったので、制度の申請先である税関も手探りでした。内部的な事情や外的な要因といろいろある中で、何とか活用できたというところです。ただ、この動きによって民間事業者の方々が保税制度を活用したフェアを展開しやすくなることを期待していますし、その旗振りとして市が一緒になって動いたことは良かったのかなと思っています。

 

古橋 ゴリ押ししたのは行政なんですね?

 

 行政の力は小さいので、何でも「やりたい」は簡単に言えるのですが、なかなか行動を移せないところがあります。そこを民間企業と連携することで、1つの施策として動いていきました。

 

古橋 今日の講演でもネットワークという言葉がよく出ましたが、大切なのはその中身ですよね。相談に来た人を実はこちらが頼って舞台にあげてしまうとか、人を巻き込んでいく総合力みたいなものが新しく生まれていくのが楽しいですね。

 

参加者B 舞台の仕事をしています。今日の講演では街に出ていくアクティブなものばかりがアートと聞こえてしまったんですが、劇場などはどうですか? そういうところで展開しているアートについては、どうお考えですか?

 

杉崎 今日のテーマに沿って話をしたため話題にしませんでしたが、横浜市にも音楽堂や、劇場、美術館、演芸場などがあります。個人の関心事としては、もともと日本の芸能は野外で行われるものから始まっているのに、なぜそこから芸術は失われてしまったのかということをよく考えます。そしてそれが失われたことで都市の公共性の影響が出ているのではないかと想像しています。

 

古橋 市民に親しまれ、人をたくさん集めるきっかけとしてアートが、もし出前的なものに限定されるとしたら、それはちょっと残念ですよね。劇場で本気で展開されているもので、社会的なテーマを扱っているものも多いと思います。

ところで福岡では公金でアワードをつくったり、美術館が作品を買ったりするなど、アートを始めた人が食べていけるようにするチャンレジをされていますが、そのノウハウはどんなところに生かされていますか?

 

 美術館だけの事業としてアワードを行うと、前提として美術館としての役割があるのでどうしてもアカデミックなものになってしまいます。そこで、それを「Fukuoka Art Next」事業の中に取り込むことによって、スタートアップの支援や市民の理解につながったり、他のアーティストが活動したりするきっかけになるといいかなと思っています。

 

古橋 そうですね、ビジネスの面白さというのは、本来横断的にいろいろなところに入り込んでいけるはずですよね。横浜と福岡の話は名古屋からすると進んでいると見えたと思いますが、樋口さんは企業の立場から感じたことがあれば聞かせてください。

 

樋口 さきほどの質問もそうですが、「企業の関わり方は難しいな」ということを再認識しました。いろいろな関わり方がある中で、我々は企画の運用自体をするのではないんですよね。事業としては自分たちの本来の事業があって、そこで皆様からいただいたお金を、皆様のために上手に使ってもらうという形の支援になります。

 

杉崎 企業でも自分たちでプログラムを持っているところは「なぜ行政と組まなければいけないのか」という話にもなります。だから「官民協働」と「アートとビジネス」というのは、ごっちゃにしない方がいいかもしれません。横浜では協働するなら「共通のメリットを見つけていこう」と言っています。そこだけ協力すればいい。何でもかんでも全部協力する必要もないと思います。

古橋 そうするとリンナイさんのように、すでにいろいろなことやられてる企業には、何か新しい展開をするときに「パートナーとして入ってほしい」というアプローチがいいかもしれませんね。

 

杉崎 企業の最大の強みは「人」です。お金よりも人。企業では人材育成をしていて優れた人が多く、その人たちに関わってもらうことで、事業の質がより高まります。あとは「発信力」。企業は広げる力を持っています。さらに「場所」を所有しているというのもありますね。

 

古橋 福岡ではどうですか?

 

 やはり行政の力というは、とても弱いです。動きたくても動けないことが多々ある中で、やはり民間企業には力があるなというのは、すごく感じます。それに企業は決断が早いですよね。スピード感は圧倒的に行政と違うものがあるので、そういった方々とうまく連携していくことが大切。行政は企業の邪魔をしないように気をつけていく必要があると思っています。

 

古橋 ありがとうございます。最後に、今日の感想を聞かせていただいて終わりにしたいと思います。

 

樋口 私たちはこれまでも企業としていろいろな取り組みをしてきましたが、その一方で「社会貢献や支援のやり方がわからない」という面もありました。今日はいろいろな事例を聞かせていただいて、「そういうアプローチの仕方もあるんだ!」という学びがありました。

 

杉崎 水辺の街づくりはすごく重要なんですが、名古屋はそれをいち早くやっていた先駆者なんですね。こういうのが名古屋の本当の価値というか、素晴らしさだなと思いました。福岡市の話からは勢いを感じました。特に保税制度の活用は、15年以上前からみんな「やった方がいい」とずっと言っていました。それをついに福岡市がやられたということで、これからはルールメイキングの競争の時代になると思います。その点、横浜市はちょっと遅れていることに自分はすごく危機感があって、今日改めて福岡市の話を聞いてそれを感じました。

 

 とても勉強になりました。行動力があることが福岡市の強みなので、ここで得たものを来年度には事業に活かしつつ、FaN事業を展開していきたいと思いますし、FaNの取り組みを全国的に認知していただいて、皆さんに応援いただけるようなものにしていきたいですし、少しでも参考事例となるような取組みを実施していければと思います。何よりこのようなご縁をいただいたので、それぞれがアートによって盛り上がり繋がっていく、仲間のような動きになっていくといいなとも思いました。

 

古橋 今日は会場の皆さんもご協力、ありがとうございました。これからも皆さんと一緒にいろいろと勉強しながら、一緒に考えて、面白いことやっていきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。