2025年度助成採択事業紹介④ 株式会社SAFEID「多様性を包括する市民参加型クリエイティブワークショップ、!⇄!(インターチェンジ) | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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2025.11.17

2025年度助成採択事業紹介④ 株式会社SAFEID「多様性を包括する市民参加型クリエイティブワークショップ、!⇄!(インターチェンジ)

写真右側:2024年「!⇄!(インターチェンジ)」で受付を担当する加藤海凪さん

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤでは2025年度も助成事業を実施しています。今年度採択された「社会連携活動助成」事業(助成A×5件、助成B×1件)を、全6回にわたっての連載で採択者がそれぞれの取り組みについて語ります。社会連携活動助成A・Bの詳細はこちらをご覧ください。

 

第4回は株式会社SAFEIDの代表、加藤海凪さんによる「!⇄!(インターチェンジ)」の紹介です。

 

イベントにご参加の方へ

「!⇄!」への入場には、サポーターズパスの提示が必要です。

公式情報・最新情報はこちら

 

【加藤海凪 プロフィール】

名古屋出身、明治大学3年生。株式会社SAFEID代表。知的障害のある弟と社会福祉士の母の影響で、高校3年時よりファッションを通じて障害のユニークさや面白さを広める活動を開始。2024年にイベント「!⇄!」を主催。Forbes JAPAN「NEXT100」選出、2025年東京都主催のファッションコンペ「NFDT」特別選抜賞受賞。

 

■ 「!⇄ !(インターチェンジ)」というタイトルに込めた想い

 

昨年、第1回のこのイベントを企画し始めたとき、協力していただいているLIVERARYの武部さんから、誰も読めないように記号にしよう!と言われ、LIVERARYぽい〜!とテンションが上がりました。それで「!⇆!」が生まれて、障害とかもう関係なく、誰も読めないマークができました。それから、「インターチェンジ」という読み方を考えました。矢印が道路みたいだなと思い、いろんな種類の「!」が、いろんな方向からきて、交差してたまにぶつかって、また違う方向へ向かっていくイメージが浮かびました。

 

バックグラウンドやライフスタイルの違う人たちが金城市場に集まって、それを見て楽しそうだなと思った人たちが集まってくる。マイナスな気持ちや綺麗な言葉で隠すことなく、素直な驚きや発見を同じ空間で共有する。それが交差して新しいものや価値観になってどこかへ向かっていく。

 

「!⇆!」が、そんなフラットな交差点のような場所になったらいいなと思っています。

 

2024年開催時の様子

 

■ 音楽・アート・マーケットなど異なる要素を交差させる設計

 

私の弟は知的障害をもっていて、同じ学校に通っていたとき少し嫌な気持ちになったことがあります。なぜか「普通がいい」ことがベースになっている環境に違和感がありました。でも、音楽フェスに行くとそれぞれの人がそれぞれのお店を出していて、それぞれの気持ちや自分のことを表現していて、とても気楽でした。お店や音楽やアートの背景にはいろんなストーリーがあって、それがただ楽しい、かっこいい、センスがいいものとして一つの場所に集まっていることがいいなと思いました。

 

だから、障害がある、ない、みたいなことよりも、おもしろくてかっこいい人たち、ものたちを、一つの箱の中に集めて、それを一緒に楽しむことは、弟にとっても私にとっても、いつも普通がベースになっている仕事場や学校に飽き飽きしている人にとっても、必要だと思っています。

 

LIVERARYや私の視点でいいな、好きだなと思った人たちを集めているので、カラーがあります。だから、障害があるかないか以前の共通点が生まれて、交差する状況が生まれやすいです。障害のある人と楽しむことによって生まれた、マイナスな気持ちもプラスの気持ちもあっていいし、何を持ち帰っても良いと思っています。「!」が生まれやすい空気感を作って、気づいたら新しい出会いがあった!交差していた!という体験を届けたいです。

 

■ 金城市場の魅力と可能性

 

会場である金城市場には、人を自然に巻き込み、まとめる力があると思います。いろんなお店やライブ、アートを詰め込んで、ごちゃごちゃしても、金城市場がまとまりを持たせてくれると思っています。

 

前回の「!⇆!」でも、お店やお客さんの横のつながりが生まれていました。ただ出店する、買う、ただライブをする、聴く、帰るという場所ではなく、会話が自然と飛び交う空間だと思います。野外など開けた場所ではなく、閉じられているところも好きです。何をやってるかわからない場所だけどなんか楽しそう!という感じが地域に溶け込んでいて面白いです。

 

よくわからないけど楽しそうだから金城市場に入ってみる。同じ屋根の下で、同じものを楽しむ。これが、自然にフラットに「交わる」きっかけになっていると感じています。

 

リノベーションを経て、朝市からライブまで多様なイベントが開催されている金城市場

 

■ さまざまな協力者との連携

 

LIVERARYには、フライヤーなどのデザインや、ブッキングのサポートをしていただいています。アーティストやお店との繋がりがあり、「!⇆!」の空気感にあったところをピックアップしてくれています。名古屋のカルチャーが好きな人たちが見るメディアなので、「!⇆!」のようなテーマを持つイベントに行ったことのない人も面白そうだから行ってみようと足を運んでくれる人にリーチするきっかけを作ってくれています。

 

さふらん生活園やポパイなどの福祉施設の方々には、出店やアートの展示、当日に困っている人がいる時の対応などをお願いしています。前回から参加していただき、価値観の共有ができていると思っています。障害や福祉を意識しすぎることをやめて、自然にその場を楽しむ、普段関わらないアーティストさんやお店、お客さんと仲良くなることを一番大切にしています。

 

■ 来場者や地域の方々に感じてほしいこと

 

外向けに話したり書いたりするときに、平等とか、インクルーシブ社会にしたいとか、本当の共生社会を作りたいとか、それっぽいことを言ってしまい、自分が本当にやりたいことと伝えたいことが少しずれている感覚がありました。

 

でも、最近「!⇆!」の企画をする中で、LIVERARYや福祉施設の方々、アーティストや出店者の方と関わり、私自身も視点が広がった気がします。障害を通さずに面白さを感じたり、まっすぐにかっこいいものを作り続ける人がいたり、しかもそれが当たり前のことであるという空気が視点を広げたのかなと思っています。関わっている人も少しずつ視点を更新しているのではないかと感じています。

 

来場者の方には、ただ楽しんでいいものやいい音を感じてもらえたらと思っています。ただ素直に楽しんでもらうことで、言葉にできない視点や感覚の変化をじわじわ感じられるはずです。

 

■ 前回から発展したことと今後に向けて

 

前回から、アーティストの数も増え、企業とも関わりを持つようになりました。名古屋市からの後援もいただき、より「!⇆!」を知ってもらうきっかけができました。事前に音を採集して、当日アーティストにサンプリングしてもらった曲をパフォーマンスしてもらう新しい企画も始まりました。

 

「!⇆!」は何回も参加してもらうことや一緒に同じ時間を過ごすことで得られるものがたくさんあると思っています。だから、これから継続していろんな場所で「!⇆!」を開催したいです。思いもしなかった出会いや、考えもしなかったコラボレーションが生まれそうなおもしろい企画をたくさんして、「!⇆!」の輪が広がっていくことを期待しています。

 


 

■ 事業名 多様性を包括する市民参加型クリエイティブワークショップ、!⇄!(インターチェンジ)

障がい福祉施設による展示、アーティストのライブパフォーマンス、トークセッションなどを実施。障がいの有無にかかわらず、多様な背景を持つ市民とアーティストが共創する複合イベントを目指す。

■ 採択区分 社会連携活動助成A

■ 採択金額 ¥1,000,000

■ 採択者名 株式会社SAFEID

■ 活動領域 福祉

■ 連携先の分野 美術、音楽

■ 日時 2025年11月28日(金)17:00~21:00、11月29日(土)12:00~20:00

■ 会場 金城市場、SUNSHINE UNDERGROUND CURRENT(29日のみ)

 

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