2025年度助成採択事業紹介⑥ SFRN(さふらん生活園)「あっぱれちよだ!ありがとうまつり/SFRN×ムーンスター×Panio展示会」 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

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2026.2.4

2025年度助成採択事業紹介⑥ SFRN(さふらん生活園)「あっぱれちよだ!ありがとうまつり/SFRN×ムーンスター×Panio展示会」

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤでは2025年度も助成事業を実施しています。今年度採択された「社会連携活動助成」事業(助成A×5件、助成B×1件)を、全6回にわたっての連載で採択者がそれぞれの取り組みについて語ります。社会連携活動助成A・Bの詳細はこちらをご覧ください。

 

最終回はSFRN(さふらん生活園)による「あっぱれちよだ!ありがとうまつり/SFRN×ムーンスター×Panio展示会」の紹介です。

 

採択者プロフィール

名古屋で38年続く生活介護施設「さふらん生活園」から生まれたアートコレクティブ。知的障害のある方と職員が共に創作活動を行い、評価にとらわれない自由な創造を通じて、多様な価値観を社会に提示することを目的としている。

 

■ SFRN(さふらん生活園)について

SFRNは、名古屋の生活介護施設「さふらん生活園」から生まれたアートコレクティブです。 私たちは「できる・できない」で人を分けるのではなく、「好きなこと」「気になること」から、暮らしや表現のかたちを探しています。

 

SFRNの作品は、誰か一人だけのものではありません。作る人の手の動きに、そばにいた人の気配、職員のまなざし、道具や失敗、偶然が重なって生まれます。「うまくできたか」より、「なんでこうなったんだろう?」を一緒に面白がること。ふと動いた手が、思いがけず形になる。その瞬間に立ち会うことが、SFRNの創作です。

 

SFRNにて刺繍を施されたTシャツ

 

■ 「つどう」から始まる、まつり

障害福祉事業所は、多くの場合郊外にあったりして、存在が見えにくくなりがちです。さらに事業所内でも「人より絵が上手」、「人よりたくさん作れる」、「人より仕事が早い」といった価値基準で物事がはかられ差が生じてしまう現状に対して、大きな問題意識がありました。

 

我々は、インドネシアの文化「ノンクロン」という、「集まること自体に価値がある」とする考え方に大きな影響を受けています。存在しているだけで、あるいは「生きているだけで表現」であるとしており「つどうことですべての人が影響を及ぼしあっている」というテーマを掲げSFRNは活動をしております。

 

「あっぱれちよだ!ありがとうまつり」も同様に「つどう」が大きなテーマです。 我々を育んでくれた千代田に「ありがとう」という気持ちをお返ししながらも、自分たちだけでなく、障害者も町の住人もただ一緒にいることで互いに影響し合う、その「不特定多数の集合知」を実感していただけたらと考えています。

 

我々が思うところの「芸術的表現」といわれるものは「好きなこと」に伴走した副産物なので、アートと言われてしまうと少し誤解を招く場合もありますが、上記した「命があるだけでそれは一つの表現でもあるし、本当に素敵なこと」を伝えるためには少しでも多くの協力者が必要です。そういったすべての「つどって生きているだけ」を共有する場として「まつり」の形態がいちばんよいと考えました。

 

左から、生活支援員の岩瀬敬裕さん、施設利用者の鈴木学さん、施設長の水上明彦さん

 

■ 障害者をとりまく千代田の現状と変化

我々、障害福祉事業所が町と関わる際は、どうしても「ご迷惑をおかけします」の気持ちから始まりがちでした。しかしいざ会話してみると地域の皆さまは同じ目線で関わってくださることがほとんどでした。私たちはそのような外からの善意を日常のように享受しつつも、こちらからの感謝の気持ちを伝える術が無かったことにやきもきとしておりました。

 

「障害者の方や我々が、町に対してできることと言えば限られている」と思っていましたが、中には我々の活動や表現に共感し、さまざまな企画に協働してくださる方々が千代田にいかに多いことが活動の手を広げるなかで分かりました。

 

発足当初はなかなか賛同を得られませんでしたが、徐々にこの「おまつり」という企画に賛同していただける方々も増え、現在ではその名のとおり千代田全域を巻き込んだ大きな盛り上がりを見せています。この地域は外国籍の住民も多く、様々な方がふらっとまつりに立ち寄ってくれるようになったのにも変化を感じています。

 

■ 当日のプログラムと楽しみ方

音楽のステージやトーク、プロレス観戦、パレード参加まですべて無料です。多様性を重視したイベントをたくさんご用意しましたが、そのいずれもが障害福祉事業所しかできない異色のものになったと企画側も楽しんでおります。

 

特に象徴的なのが、プロレス企画です。プロレスは戦いの形をしているけれど、実はルールのある「非言語のコミュニケーション」でもあります。言葉で会話しづらい人もいる中で、身体表現の可能性を安全と尊厳に配慮しながら探ってみたいと思っています。もう一つは、発酵をテーマにしたトークです。発酵や熟成の「待つ/任せる」という感覚は、福祉の現場の時間感覚ともどこか重なるところがあります。

 

トークのテーマ、ワークショップ、展示、そのすべての企画が障害者目線と健常者目線がまじりあったものになっています。 そのため企画を目の当たりにしたとき皆さまは何かしらの「違和感」を感じると思います。 その「違和感」に対して答えをだす必要はなく、そのまま皆さまの価値観や常識の中で障害を個性として面白がる、あるいは自然に考えることができる催しです。

 

JR中央本線高架下のプロレス会場「Sportiva Arena」

 

■ 企業・地域店舗との協働の工夫

幸いにしてさふらん生活園は立地的に名古屋市中区千代田という障害者福祉事業所としては異例の町の中にあります。そのメリットとして大きいものは人的リソースが豊かということ。ムーンスターさま、Panioさま、竹田印刷さま、トライデントデザイン専門学校さま、アーティストのマーロン・グリフィスさまなど、専門性豊かな関係者のみなさまに各種企画をほぼお任せしてしまっています。

 

初めて協働する企業さまとは丁寧にやり取りを進めていたつもりですが、関係者さまの数が増えるにつれて連絡が行き届かず、ご迷惑をおかけしてしまうこともありました。企画については、途中で進捗を聞いたり、当日の店の配置を調整するなど、最低限は施設側で管理していますが、基本は信じて任せ、こちらが大きく舵取りしすぎないようにしています。おかげで、企業さまや学校さまの得意分野を生かしたものになったと実感しています。

 

■ 来場者が得られる体験

障害福祉事業所に足を踏み入れること自体が大きな体験になります。 この障害者、健常者が混じりあう空間が「まつり」という特別な状況下において自然と非日常と感じない場所になるといいと思います。

 

さふらん生活園が社会資源としてできることの一つで、町へのお返しになるといいと思っています。ひいてはお互いの存在に気づき、安心安全を守りながらも交流をオープンにすることで、さふらん生活園、障害者の方々が地域の一つの施設として存在する理由になっていくことを期待します。

 

手織り機を用いた織物製作

 

生地から袋詰めまで、全ての工程を施設利用者が担当している「さふらんクッキー」

 


 

■ 事業名 あっぱれちよだ!ありがとうまつり/SFRN×ムーンスター×Panio展示会

生活介護施設「さふらん生活園」が所在する千代田エリアの近隣店舗等と協働しサーキット型イベントを開催。施設利用者によるアートの展示や、地元企業とのコラボレーショングッズなどを展示販売、パフォーマンスなども実施。多様な人々が共に暮らす地域コミュニティの持続的な形成を目指す。

■ 採択区分 社会連携活動助成A

■ 採択金額 ¥1,000,000

■ 採択者名 SFRN(さふらん生活園)

■ 活動領域 福祉

■ 連携先の分野 美術、まちづくり

■ 日時・会場 2026年2月21日(土)、22日(日) 千代田エリア各所(中区)

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