採択事業者インタビュー③ 名駅南地区まちづくり協議会「クリチャレ―名駅南クリエイティブチャレンジ― 2023」 | つながるコラム | クリエイティブ・リンク・ナゴヤ

インタビュー

まちづくり

社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)

2023.12.27

採択事業者インタビュー③ 名駅南地区まちづくり協議会「クリチャレ―名駅南クリエイティブチャレンジ― 2023」

(左から)山崎嵩志さん、加納実久さん、宇佐見康一さん

 

クリエイティブ・リンク・ナゴヤの2023年度助成事業において、「社会連携」をテーマに採択された事業(助成A×3件、助成B×1件)を4回にわたってご紹介します。

各助成の詳細はこちらをご覧ください。

 

第3回は名駅南地区まちづくり協議会の宇佐見康一さん、加納実久さん、山崎嵩志さんにお話を伺いました。

 

■ 事業名 クリチャレ―名駅南クリエイティブチャレンジ― 2023

昨年度開催した複合型イベントの評価にもとづき、クリエイティブ×まちの可能性を考える講演会と地域住民とのワークショップ「クリさろ」、クリエイターを公募し、展示・発表する機会を生み出す「クリチャレコンペ」とアーティストインレジデンスプログラム「クリチャレCAMP」を実施する。最終的にこれらの実施結果を総括し振り返るワークショップを開催する。地域住民の「関わりしろ」と名古屋圏のクリエイターが自主的かつ自発的な活動や情報発信ができる「関わりしろ」をつくることを目指す。

 

■ 採択区分 B(社会連携・まちづくり)

■ 採択金額 ¥1,000,000

■ 実施者名 名駅南地区まちづくり協議会

■ 連携分野 まちづくり×美術・音楽

■ 期日 2023年10月~2024年2月

■ 会場 名駅南地区各所

 

【実施者プロフィール】

名駅南地区でクリエイティブ活動を活かしたまちづくりを推進する団体。目指すべきまちや通りのイメージを「名駅南地区まちづくりビジョン」として掲げ、まちの将来像を段階的に共有、ブラッシュアップしながら活動を進めている。中でもクリチャレにおいては、オープンスペースや駐車場、都市公園を表現の場として活用し、地域におけるクリエイティブな機運の持続的向上を目指す社会実験として、新たな協働やビジネス機会につなげることを目指す。

 

 

―――今回の事業はどのような内容ですか。

 

加納 昨年度クリエイティブ・リンク・ナゴヤの助成金で実施した事業を踏まえて、クリエイティブとまちの可能性を考えるワークショップ「クリさろ」(クリエイティブ・サロン)や、新たにコンペなどのイベントを行います。

 

名駅南地区には、企業のオフィスや新しいマンションが多く建っていますが、地域としての特色があるというよりも、利便性の観点から住むことを選ぶ人が多い場所と言えます。私たちはこれまで、まちの活性化を考える中で、「何かを始めようとする人たちが入り込む余白がある所が盛り上がっていく」という事例を多数見てきました。そこで、「名駅南に来るきっかけになることを、クリエイティブを軸に起こしていけたら」という思いのもと、まちづくり協議会として取り組みを続けています。

 

今回の事業プランにも組み込んでいる「クリさろ」は、この地域で活動をしている方をお招きして、サロンの形式でお話しいただくというものです。クリさろは、これまでにも何度か開催しており、例えば「防災」「パン」「カフェ」のような日常に根差したテーマをめぐって、まちの方たちに興味を持ってもらえるような話題をゲストから提供してもらいます。こうした場をきっかけに、暮らしが楽しくなる視点を持ち帰ってもらい、さらに地域に楽しいコンテンツがたくさんあるということを発見してほしい、というのが大きな狙いです。

 

クリさろを含む活動は2018年頃から続いているのですが、2020年以降は新型コロナウイルスの影響ですべて停止してしまいました。その後2022年10月に、再出発として「クリチャレ(クリエイティブ・チャレンジ) Kick Off 2Days」を実施し、様々なクリエイターを呼んで、ビル街の中で演劇や書道、音楽など様々なパフォーマンスを披露してもらいました。この時は、2日間と短い期間だったもののまちに賑わいをもたらすことに成功しました。ただ、告知の時間も限られていたので、後から「知ってたら行ったのに」というような声も多くいただきました。

 

これを踏まえて今回は、名駅南地区と人々の「かかわりしろ」を増やすことを大きな目標として設定しています。先日のクリさろでは、「第3回名駅南を面白がる会」と銘打ち、この地域にどんなコンテンツがあったら面白いか、というテーマで皆が話し合いを行いました。さらに、そこから出されたアイディアをもとに決めたテーマに沿って、作品を制作してもらうアーティストをコンペで募集しました。他にも今後は、「クリチャレCAMP」として、アーティスト・イン・レジデンスのようなこともできたらと考えています。

 

―――「第3回名駅南を面白がる会」はどのようなイベントだったのですか。

 

「第3回名駅南を面白がる会」の様子(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)

 

加納 「名駅南を面白がる会」という集まりは、今年に入ってからすでに3回開催しています。一番最近実施した第3回目では、国内各所で「面白がる会」を実施されている合同会社パッチワークスの唐品知浩さんにゲストとしてお越しいただきました。当日はまちづくり協議会メンバーだけでなく、名駅南にゆかりや関心のある参加者が東京など県外からもあり、お茶やお菓子を片手に、各人が「オモシロガリスト」となって、名駅南地区をもっと面白くするようなアイディアを自由に出し合いました。

 

例えば、名鉄百貨店本店にある有名な「ナナちゃん人形」について、「歴代の衣装を名駅南地区のオフィスビルの壁面に飾ってワードローブとして展示しよう」というアイディアや、名駅南地区を通る三蔵通に注目して「3月9日を三蔵(みつくら)の日にしよう」や、地域内にあるバスの営業所から大型バスを出してもらい「バスで通りを封鎖して自由に遊べる空間を作ろう」など、他にもユニークな意見がたくさん出てきて、とても面白かったです。

 

山崎 もちろんすべてを実現できるわけではありませんが、色々な制約を打ち払って、誰の目も恐れずに自由な意見を交わす、というのはとても面白い試みでした。面白がる会では、「他人の意見を否定しない」ことをルールとして唐品さんが決めているのですが、全員がとても自由に話し合ってくださり、とても楽しく賑やかな時間を過ごすことができました。

 

―――そこから出されたアイディアをもとに、「クリチャレコンペ」で募集する作品のテーマが決まったんですよね。

 

加納 今回初めての開催となった「クリチャレコンペ」では、「面白がる会」での話し合いを踏まえて、名駅南地区をもっと盛り上げるための4つのテーマのもと、作品プランを募集しました。

 

コンペ当日は4名の応募者を迎え、祢宜公園を会場として公開審査会を行いました。寒空ではありましたが、小さいお子さんを含め多数の方が見に来てくださいました。公園の入り口にパネルを設置したので、それを読んでくださるまちの方も多かったです。「面白がる会」は会議室での開催でしたが、コンペは公園というオープンな場所で実施できたので、通りすがりの方たちにも興味を持っていただけたのでは、と思っています。審査は終了し、今回のコンペで採択されたアイディアは、1月末ごろまでを目安に名駅南地区で順次展開される予定です()。

※ 採択となった企画の実施スケジュールは本記事末尾に掲載。

 

祢宜公園でのコンペ当日の様子(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)

 

今回のように開かれた会場でイベントを行うと、まちの人たちが自然と巻き込まれていきます。祢宜公園の利用者は、それぞれ別の目的を持ってここを訪れますが、みんなが楽しく、気持ち良く利用できたら一番いいと思います。まちづくりの視点から、人々と地域の「かかわりしろ」を少しずつ広げていきたいですね。

 

今回は、「面白がる会」から派生したイベントとして「五千人祭(ごせんにんさい)」も計画しました。名駅南地区にはおよそ5,000人の住人がいるというデータを踏まえ、とにかく地域の人たち全員と集まってみたい!というアイディアをコンセプトとしたものです。「五千人祭」では色々なイベントが用意され、例えば「みんなで乾杯リレー」という企画では、できるだけたくさんの人と乾杯をして盛り上がることを目指しました。

 

「五千人祭」は今回が初開催なのですが、最初は少ない参加者でも、回数を重ねる度に規模が大きくなって、いつか本当に5,000人が街中で一緒に楽しんでくれたら嬉しいな、と思っています。

 

―――今年度のクリエイティブ・リンク・ナゴヤ助成金事業において、唯一の前年度からの継続採択者となったことについて、どのように感じていらっしゃいますか。

 

(左から)山崎さん、加納さん、宇佐見さん

 

加納 まちづくり協議会として活動を続けていく上では、ただやみくもに事業を行うのではなく、やはり何らかの評価を受けることも必要になってきます。2年連続で助成事業に採択されたことは、「お墨付き」をいただけたという意味にもなるので、嬉しかったです。また、今年5月に開催されたクリエイティブ・リンク・ナゴヤの助成事業報告会の場で、他の採択者と交流できたのは良い経験でした。ここでのご縁が一つのきっかけとなり、アーティストの鷲尾友公さんにクリチャレコンペの審査員を務めていただくことにもなりました。

 

継続して助成金をいただくことについて、プレッシャーはもちろんあるのですが、そのポジションにいるからこそ頑張ろう、と思えるのも事実です。今日お話しした様々な取り組みについても、自分たちだけで楽しもうとするのではなく、クリエイティブ・リンク・ナゴヤと繋がることで、新たなインパクトの創出にも結び付くのではないかと思います。前回採択時は、クリエイティブ・リンク・ナゴヤの助成事業の第1回目だったこともあり、私たちは一期生として一緒に走っていくような気持ちでいます。クリエイティブ・リンク・ナゴヤの動きを「自分ごと」として活用させてもらう点に、大きな意義を感じますね。

 

名駅南地区にあるレンタルスペース「クリばこ」の壁に貼られたクリチャレのチラシ

 

宇佐見 私たちの取り組みは、まだまだ挑戦の途中段階のものが多く、マラソンの最中のような気持ちで頑張っています。色々なことをやってみる中で、思うようにいかない事も出てくると思います。見えてきた課題は掘り下げて改善し、また上手くいったところはしっかりと膨らませながら、まちがより良い方向に向かっていくことを目指しています。

 

 


 

クリチャレコンペ採択企画実施日

  • (終了)Ron Chat Yoga:2023/12/23 10:00-12:00 , 2023/12/27 10:00-12:00  会場:祢宜公園(Googleマップ
  • 喫茶少々×ピンキューニット:2024/1/6 12:00-21:00 , 2024/1/7 12:00-20:00  会場:クリばこ(Googleマップ
  • 魁士パントマイムワークショップ:2024/1/27 13:00-14:30  会場:クリばこ

 

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