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2025.10.10
2025年度助成採択事業紹介② Mas Nagoya実行委員会「METAMORPHOSIS Ⅲ WHERE CRANES DANCE」
クリエイティブ・リンク・ナゴヤでは2025年度も助成事業を実施しています。今年度採択された「社会連携活動助成」事業(助成A×5件、助成B×1件)を、全6回にわたっての連載で採択者がそれぞれの取り組みについて語ります。社会連携活動助成A・Bの詳細はこちらをご覧ください。
第2回はMas Nagoya実行委員会によるプロジェクト「METAMORPHOSIS Ⅲ WHERE CRANES DANCE」を、代表のマーロン・グリフィスさんが紹介します。
鶴舞公園でのパレード参加には、事前申し込みが必要です。 また、参加条件として事前の「マスキャンプ(衣装作りワークショップ)」やイベントに1回以上ご参加ください。
- マーロン・グリフィス 鶴舞公園パレード|11月9日(日) 11:00~12:00|会場:鶴舞公園|参加申し込みフォーム
- マスキャンプ(衣装づくりワークショップ、予約不要)|10月18日(土)~11月8日(土) 10:00~20:00(水曜休み)|会場:名古屋市中区千代田5丁目13-43 高架下(旧輸入車ショールーム)
- マスク作りワークショップ in 鶴舞公園(予約不要)|10月19日(日) 10:00~16:00(荒天中止)|会場:鶴舞公園ヒマラヤスギ並木
- 鶴トーク & ムービーナイト(予約不要)|10月25日(土) 13:30~15:00/18:00~19:30|会場:マスキャンプ会場
- 太鼓ワークショップ(東海太鼓センター)|11月4日(火)、11月8日(土) 各17:00~17:45|会場:マスキャンプ会場|参加申し込みフォーム
- Mas Nagoyaマルシェ(予約不要)|11月9日(日) パレード当日|会場:鶴舞公園 奏楽堂
ウェブサイト|Mas Nagoya / Instagram|@mas_nagoya
【採択者プロフィール】
トリニダード・トバゴ出身の現代美術家マーロン・グリフィスが鶴舞周辺で展開するアート活動を通じて、地域の発展、住民の交流促進、異文化交流、アートによるまちづくりの促進を目的とする団体。2024 年設立、同年に「Metamorphosis Ⅱ」を実施した。
■ 鶴舞公園三部作「METAMORPHOSIS」最終章
2023年、2024年と続けて取り組んできた鶴舞公園三部作「METAMORPHOSIS(メタモルフォシス)」の最終章として、2025年11月9日に鶴舞公園でパレードを開催します。これに先立ち、公園近くでは一定期間にわたり「マスキャンプ」と呼ばれる創作の場を設けます。このマスキャンプでは人々が自由に行き来して交流し、地域の歴史や文化に触れ、鶴舞という地域についてより深く知りながら、パレードで用いるマスクや衣装を制作します。過去二回の取り組みで築かれた地域との繋がりを踏まえ、今年は規模を拡大し、パレードの参加者数を100人とすることを目標としています。また11月の本番に先がけて、8月には鶴舞公園近くのイオンタウン千種で開かれた「ミズマツリ」と同じ日に小規模なパレードも行いました。

ミズマツリ同日パレードの参加者と実行委員 ©Mas Nagoya実行委員会
■ テーマ「未来の鶴舞」について
「未来の鶴舞」をテーマにした今年のプロジェクトの副題は「WHERE CRANES DANCE(鶴の舞う場所)」です。プロジェクト全体を通じて常に未来を見据え、「METAMORPHOSIS(メタモルフォシス/都市の変容)」を完結させたいという構想を抱いてきました。第1作と第2作では鶴舞公園とその周辺地域の歴史を深く掘り下げてきましたが、三部作の完結編にあたる今年のプロジェクトでは、未来を見据え、私たちを取り巻く世界がどのように変化し、私たち自身がどのように呼応していくかを深く見つめ直す段階にあると考えています。
私にとって未来とは、絶えず動き続けるものであり、人によってはゴールであったり、希望であったり、常に新しい始まりでもあります。未来は波のように、穏やかなときもあれば大きくうねるときもありますが、過去を理解することで次に訪れるものによりよく備えるのだと思います。だからこそ、この三部作の完結編は「Farewell(さようなら)」ではなく「Thank you(ありがとう)」であり、ここからさらに前へ進むための新しい入り口なのです。

パレード衣装のスケッチ
■ 創作と交流の場、マスキャンプ
私の母国、トリニダード・トバゴでは、マスキャンプは単なるワークショップの場ではありません。創作活動だけでなく、新しいひらめきやアイデアを得ようとする人、地域にまつわる歴史や文化を学ぼうとする人、リラックスするために訪れる人、人との繋がりを求める人など、多様な目的で集まります。 鶴舞でのマスキャンプも地域で同じように機能し、誰もが自分に響く何かを見つけられることを願っています。それは、人々が互いを知り、学び、類似点や相違点が良い影響を及ぼし合うことを実感する場となるはずです。過去2回のプロジェクトでも、多様な人々がキャンプに参加し、パレードに付加価値を与えてくれたことに感謝しています。

2024年度に実施されたマスキャンプ ©Mas Nagoya実行委員会
■ 広がり続ける協働の場
これまで創作活動はマスキャンプを中心に展開してきましたが、今後はその枠を越え、活動の幅をさらに広げていくことを目指しています。その一環として、鶴舞に新設された愛知県の施設「STATION Ai」では、レーザーカッターなどの機材を活用しながら、新しい素材や技法を試す制作を進めています。こうした試みは、異なる分野の人々と交流しながら、創作の可能性を広げていく機会にもなっています。
生活介護事業所「さふらん生活園」での出張ワークショップは、障がいがあることで時間を合わせてパレードやマスキャンプに来ることが難しい人々にも、私たちから出向くことで創作活動に参加してもらい、パレードに多様性を生む試みです。また、昨年開催して好評だったマルシェは今年も開催し、パレードで集まった人々の交流が続くように企画しています。

さふらん生活園での出張ワークショップ ©Mas Nagoya実行委員会
■ 和太鼓とともに生み出す新しい響き
パレードに参加する東海太鼓センターの皆さんとは、これまでに素晴らしい関係を築いてきました。昨年初めて行った太鼓ワークショップは大成功で、今年はさらに充実したものになると期待しています。彼らは新しいことに挑戦し、既成概念にとらわれない柔軟さと情熱を持ち合わせた、理想的なコラボレーションパートナーです。今年は伝統的な響きに加えて新しい楽器や要素を取り入れ、より実験的な表現を試みます。即興性や自由な発想を尊重しながら、「未来」をテーマに独自の音響を創り出すことを目指しています。

2024年度のパレードで活躍した和太鼓 ©三浦知也
■ 地域社会と交わす声、広がる関係
私は、プロジェクトで何を表現しようとしているのかを人々と一緒に考え、共有し、それを実現するためのリサーチプロセスを共に行うことで、外部から来た自分でも地域内で関係を築いてくことが可能になると考えています。ありがたいことに、プロジェクトの取り組みを深く理解し、熱意を持って応えてくれる人々と繋がることができ、また昨年度は戦争の時代を知る方々から自分たちのストーリーを共有していただく機会にも恵まれました。鶴舞に住むトリニダード人として、今でも言語や文化的な違いに戸惑うことはあります。だからこそ、対話や交流を実現するために地域社会で何が起こっているのかを理解し、耳を傾け、学び続けることが不可欠だと感じています。
■ リサーチから生まれる未来のビジョン
「未来」という今年のテーマはより概念的なものですが、私は鶴舞公園とその周辺地域については引き続き調査を行っています。この地域の歴史には、なお多くの興味深い出来事が残されているからです。未来へと前進するためには、多方面から過去を理解することが不可欠です。
今年のリサーチでは、特に都市開発、とりわけ人口の流入や景観の変化に焦点を当てています。名古屋都市センターでの歴史調査を通じ、作品制作に資する知見を積み重ねています。とりわけ戦後から高度経済成長期への移行には大きな「ジャンプ」があり、その急激な変化ゆえに記録として残されていない部分が多く、リサーチ上の課題となっています。それでも、私はこの三部作の完結編を「これまで支えてくれた人々への感謝と、新しい未来への出発」として描きたいと思っています。

鶴をモチーフにした鶴舞公園の建築装飾
■ 鶴舞で育まれた絆
三部作が完成したときに、これらのプロジェクトがどのような影響を与えたかが明らかになるでしょう。確信を持って言えるのは、過去2年間でプロジェクトの存在感が地域の中で確実に高まってきたということです。誰でも参加できるプロジェクトであることで、人々と繋がるつながることがより容易になりました。マスキャンプで意欲的に制作し、自分たちの成果の完成形を見届けたいと願う参加者の姿、特に子どもたちの姿は強く心に残っています。そして、自分たちの作品がついに動き出した瞬間に見せた、人々の満足そうな表情は忘れることができません。

マーロン・グリフィスさん 鶴舞公園にて
■ 事業名 METAMORPHOSIS Ⅲ WHERE CRANES DANCE
現代美術家マーロン・グリフィスが地域と共に創る、鶴舞をテーマにしたパレードの第3弾。パレード参加者は衣装づくりワークショップ「マスキャンプ」にも参加する。そのほか地域主体のお祭りでのプレイベントや出張ワークショップも開催。地域の多様な人々をつなぐプロジェクト。
■ 採択区分 社会連携活動助成B
■ 採択金額 ¥2,000,000
■ 採択者名 Mas Nagoya(マス・ナゴヤ)実行委員会
■ 活動領域 美術
■ 連携先の分野 まちづくり
■ 日時・会場
METAMORPHOSIS Ⅲ WHERE CRANES DANCE(パレード本番)
日 時:2025年11月9日(日)11:00~12:00(雨天時は16日(日)に順延)
会 場:名古屋市 鶴舞公園
マスキャンプ(衣装づくりワークショップ)
日 時:2025年10月18日(土)~11月8日(土)10:00~20:00(水曜休み)
会 場:名古屋市中区千代田5丁目13-43 高架下(旧輸入車ショールーム)
出張マスキャンプ in さふらん生活園(※好評のうちに終了しました)
日 時:2025年10月2日(木)10:00~11:40/13:00~15:00
会 場:名古屋市中区千代田3丁目21-14
マスク作りワークショップ in 鶴舞公園
日 時:2025年10月19日(日)10:00~16:00(荒天中止)
会 場:鶴舞公園ヒマラヤスギ並木
鶴トーク & ムービーナイト
日 時:2025年10月25日(土)13:30~15:00/18:00~19:30
会 場:マスキャンプ会場
太鼓ワークショップ(東海太鼓センター)
日 時:2025年11月4日(火)、11月8日(土)各17:00~17:45
会 場:マスキャンプ会場
Mas Nagoyaマルシェ
日 時:2025年11月9日(日)パレード当日
会 場:鶴舞公園 奏楽堂
ウェブサイト|Mas Nagoya / Instagram|@mas_nagoya